【イチロー4000本安打の価値】イチローの言霊(中編)

自分を安定した状態に持って行くテクニックは持っている

――常に一定の気持ちで試合に臨めるように自分をプッシュしているものは何か?

「何かをやりながら自分をプッシュしてきたわけではなくて、毎日同じことを繰り返す。厳密に言うとすべて同じではないんですけど、そういうことで自分を安定した状態に持っていくテクニックはあると思います。ただ、それは毎日継続できたとしても、精神が常に安定するとは限らない。ただ、その時点の自分でできること、考えられることをやっておきたいということですね。それで結果的に不安定な状態になることはもちろんありますし。その割合が多いとは言いませんけど、時々そういうことがある。特に、良くない結果だったり、難しいゲームの後というのは、気持ちを整理することは難しい状態にあることがあるので。いつも続けていることをまた続ける、その日も続けるということが時々しんどいなと思うことがありますけど、そこは頑張りを見せることでしょうね、自分で。それは続けてきたつもりです」

――考えることも野球選手の1つだと話していた。それが熟成していった部分、変わった部分は?

「自分が野球選手として、人間として、成熟できているかどうか、前に進んでいるかどうかは、いまだに分からないんですよね。そうでありたいということを信じて、やり続けることしかできない。実は今まで自分が成長しているとか、前に進んだとかっていうことを明確に感じることはできていないんですよね。それがこれからも続いていくんでしょうけど、どこかの時点で、野球とはこういうものだ、打つこととはこういうことだ、生きるとはこういうことだ、とかそういったものが少しでも見えたらいいなとは思いますけど、現時点では皆さんの前で発表できることはないですよね」

――年齢とともに体は変わっていくと思う。今までは体が反応していたものが、脳が指令するということはあるのか?

「どうでしょうねぇ。昔できたことが今できないってことが見当たらないんですよね。で、昔考えなかったことを考えるようになったということはあると思います。なので、40になる年なんですけど、色んなことを考えなくてはいけない。過去の自分と現在の自分を客観的に見てどうなのかっていうことは、大切なことなんだと思うんですよね。ただ、そういう目を持ちながら見たとしても、ネガティブなことが見つからないんですよね。まぁ、ちょっと白髪は増えましたけど。あとはどうですかねぇ。こんなこと以前も言いましたけど、紅白歌合戦では演歌の方が良くなってきたとかっていうのはちょっとありますけど。なかなか疲れが取れづらくなったとか、疲れやすくなったとか、足が遅くなったとか、肩が弱くなったとか、今のところないようです。って言っておいたほうがいいですね。ないって言うと、またうっとうしいから。ないようです」

【後編に続く】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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