高橋尚成の今 苦悩の1年を経験して導き出した答えとは?

過酷なマイナーリーグでのプレー

 この時点で獲得意思を示す球団がなかったため、高橋はカブスとのマイナー契約を選択。渡米4年目にしてほぼ初めてとなる本格的なマイナー生活がスタートすることになった。その実態は、メジャーとはあまりにも異なる過酷なものだ。

 専属のトレーナーはつかず、通訳もいない。チャーター機を使用するメジャーとは違い、7、8時間にも及ぶバス移動は当たり前。一般の飛行機で移動するときも、試合当日の朝4時に集合となることがしばしばあった。長い時間をかけて敵地に到着すると、今年38歳になったベテランは必ず腰と首に痛みが出たという。

「体のケアも全部やらなくちゃいけないのは大変だった。今年1年、体力的にはめちゃくちゃきつかった」

 それでも、気持ちは萎えなかった。6月には、当時ナ・リーグ東地区で首位のダイヤモンドバックスと4ゲーム差につけていたロッキーズとマイナー契約。カブスに志願して実現した移籍だった。早くも優勝争いから脱落し、若手主体のメンバーに切り替えていたカブスでは、メジャー昇格の可能性は低いと判断したのである。ただ、これが結果的には「吉」とならなかった。

 キャンプから所属し、メンバー構成も熟知していたカブスでは、自分が果たすべき役割や狙うべきポジションもはっきり分かっていた。だが、何も知らずに飛び込んだロッキーズでは、それが見えてこない。どんなに3Aコロラドスプリングスで登板を重ねても、メジャーで投げる自分の姿が想像できなくなっていた。

 カブス傘下の3Aアイオワでは20試合で防御率1・98だったが、コロラドスプリングスでは18試合で防御率6・66。成績だけを見ても当時の苦悩が伝わってくる。ただ、このことすらも、高橋は前向きに捉えている。

「今後につながる選択をしたと自分でも思っているから、悔いは残ってない。ロッキーズに行ってから、また楽しかった。色んな仲間も増えたし。そういう面では良かったと思う」

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