マー君獲得の本命に浮上!? マリナーズが大型補強を続けるワケ

大補強の理由はどこにあるのか

 これらの大補強の理由は何なのか。

 まずは潤沢な資金力があることだ。来季からは17年総額20億ドル(約2060億円)の放映権料が入ってくる予定。また、本拠地セーフコ・フィールドでの観客動員は低迷しているが、実はマリナーズは黒字が続いているという。今季の選手の総年俸は、開幕時で約8400万ドル(約86億5000万円)。これは、2億3000万ドル(約237億円)でトップだったヤンキースの約3分の1程度でしかない。総年俸が安いことで、大リーグ機構(MLB)からレベニュー・シェアリング(利益公平分配金)や、贅沢税(選手の総年俸が高い球団が払う課徴金)の分配金を多く獲得しているのだ。

 さらに、ジャック・ズレンシックGMが解雇の危機に瀕していることも大きい。2009年に就任したが、補強はことごとく失敗。大砲候補として連れてきた選手は機能せず、貧弱な打線は低迷の原因となった。立て直すきっけすらつかめない状況が続き、来年も結果を残せなければクビが飛ぶとの声がある。資金力を生かした、なりふり構わぬ補強に乗り出すのも当然だろう。

 また、1983年から球団社長を務めていたチャック・アームストロング氏の退任が決まったことも理由の1つに考えられる。2000年オフにイチロー獲得に尽力するなど手腕を発揮してきた名物社長だが、来年1月で現職から退くという。球団の方針転換としてはしっくり来る理由だ。

 カノだけでなく、さらにスター選手を獲得できれば、低迷している観客動員も持ち直して、収入増が見込める。また、狙っている全ての選手を合わせても、総年俸は贅沢税の規定額となる1億8900万ドル(約194億7000万円)には届かない。このタイミングでの積極補強には、プラス要素ばかりが目立つ。もちろん、カノの大型契約には疑問の声も多く、これで結果が残らなければ大バッシングを浴びることは確実だが……。

 米紙ロサンゼルス・タイムズは、新たなポスティング・システム(入札制度)の締結が遅れ、田中のメジャー挑戦が明らかにならないことで、獲得を目指していたドジャースやヤンキースの熱が冷め始めていると報じている。補強の遅れは命取りになりかねないからだ。そこで、新たな本命として浮上しているのが、資金力豊富なマリナーズだ。フェリックス・ヘルナンデス、岩隈久志という「2枚看板」にプライスと田中が加われば、メジャー最強の先発ローテーションが完成するだろう。さらなる打線の補強も順調に進むことで、2001年以来の地区制覇へ期待も高まってくる。今オフの主役となりつつあるマリナーズが、来季、メジャーリーグをかき回すかもしれない。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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