プロ野球の契約更改交渉にみる「アップ率」って何?

歴代で最大のアップ率を勝ち取った選手は?

 ただ、上には上がいる。若いうちから成績を収めれば、少ない年俸から一気に高年俸となり、アップ率も大きくなる。1994年にブレークしたイチロー(当時オリックス)は800万円から8000万円に昇給。なんと900%もアップしている。これは球界史上2位のアップ率である。

 当然のことながら、ブレークした年にアップ率は伸びる。05年には1000万円から6800万円になった青木宣親(当時ヤクルト)が580%、最近では昨年14勝を挙げ、リーグ優勝の原動力となった日本ハムの左腕・吉川光夫が1100万円から7000万円となり、530%のアップ率を記録している。

 また、「ブレーク」組以外のアップ率上位選手のキーワードは「復帰」である。歴代の最大アップ率は福盛和男投手(当時楽天)が記録しており、2009年の年俸が実に1036%だった。

 福盛は2007年まで楽天でプレーしていたが、メジャー挑戦を決意し、レンジャーズへ入団。しかし活躍できず、2009年のシーズン途中に楽天にテスト入団の形で戻ってきた。当時の年俸はたったの440万円。それでも、7勝1敗10セーブ、防御率2.18の成績でチームをリーグ2位に押しあげ、球団史上初のクライマックス・シリーズへ進んだ。その貢献度から、オフに提示された金額は5000万円。4560万円のアップとなった。

 そのほかにも特筆すべきアップ率を誇ったのは、2007年の年俸が600万円だった中村紀洋内野手だ。当時は所属先がなく、中日を率いた落合博満監督が育成選手として中村を拾った。「契約してもらっただけでもありがたい」と奮起した中村は開幕前に認められ、600万円で支配下登録選手に。どん底を見た男はそのシーズン、チーム3位の打率.293、20本塁打、79打点と復活。リーグ優勝に貢献しただけでなく、日本シリーズでは打率.444でシリーズMVPを獲得する活躍を見せ、オフには年俸4400万円増を勝ち取った。その時のアップ率も733%と非常に高かった。

 何度も言うが、アップ率はチームの貢献度を表す。来年も、新人や2年目といったフレッシュな選手のアップ率が注目されるのか、それとも、所属なしを経験し、野球ができることの喜びを知った男たちが這い上がって、若手以上の上昇率を勝ち取るのか。いずれにせよ、契約更改では、アップ率が注目されるような選手の登場に期待したい。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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