ゴールデングラブ賞・藤田一也を支えたプライド

藤田の守備を向上させたプライド

fujita
藤田一也の年度別成績

 さらにプロ入り以降、藤田の守備を向上させたのは、プライドだったのかもしれない。「自分は守備に自信があった。でも、そこで一番でないことが嫌だったんです」。守備で輝いてない自分は、本当の自分ではない。守備でライバルたちに負けるわけにはいかない。そんな思いを秘めた藤田は「数を受けないとうまくはならない」と守備で一番になるために、色々な種類のノックを受けることを決意。守備のスペシャリストを目指した。

 バッテリーの配球を見て、打球位置を予測する訓練もした。投手の得意とする球種も頭に入れて、バウンドが高い打球が来ることも予想するなど一歩目の動きを大事にして、アウトにしたこともあった。捕球から送球する際は小さくてもいいから必ずステップを入れ、送球の安定性を重視した。そんなふうに、様々な角度から守備を学んできた。

 昨年途中から楽天に移籍後は、守備で勝ち取ったスタメンもあった。打撃さえいい状態をキープすれば、レギュラーを勝ち取れる可能性は十分あった。そして今年は開幕戦にスタメン起用された。首脳陣の信頼を開幕からつかむと、打撃も開花。「1年間を通して使ってもらえたのが初めてだったので、それがよかったです」と藤田。これまでは打てないと不振とみなされ、すぐに控えの守備要員にさせられてしまっていたが、今年は9年目で初の規定打席に到達。打率2割7分5厘で楽天のスタメンになくてはならない存在へとなった。

 守備から這い上がってきた男が見せた9年目の結実。負けるわけにはいかない、1番でなくてはならないという得意の守備へのプライドが、藤田をここまで押し上げてきた。ゴールデングラブ賞を獲得したからこそ、これからも厳しい練習を重ねるだろう。その座を絶対に渡さないために。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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