打点王を獲得した浅村栄斗の成長を支えたものとは

メンタル面の成長でたくましさを増した浅村

 メンタル面の成長も見逃せない。昨季までの浅村は、寝坊による遅刻などで首脳陣から大目玉を食らうこともしばしば。練習開始時間ギリギリまでグラウンドに姿を見せないこともあった。

 だが今季は、全体練習の3時間前には球場入りし、「風呂に入ったり、マッサージを受けたりしてリラックスしています」。一塁手の定位置をつかんだ後も、希望する遊撃や三塁の守備位置で早出練習をこなし、貪欲にレベルアップを図っている。「一軍で出してもらうようになって3年目になった。責任感を持ってやるようにしている」

 渡辺監督からも自立を求められていた。「開幕前に言われたんです。『もう、おまえは若手じゃない。中堅としても見るから、若い選手を引っ張っていくように』って。自分はやって当たり前、やらなきゃいけない立場だと思っている」。同学年のルーキー金子侑司や、年下の永江恭平を伴って食事に出かけるなど、若手リーダー格としての自覚も芽生え始めた。

 グラウンドの内外でたくましさを増した浅村に、指揮官も全幅の信頼を寄せた。9月に入り、本塁打王4度の主砲・中村剛也が復帰しても4番の座は揺るがなかった。抜擢に戸惑っていた球宴前には、「自分が4番を打っていたら、超弱いチームだと思われちゃうでしょ。中村さんが戻ってくるまで頑張ります」と繰り返していたが、終盤戦を迎えるに連れ、渡辺監督は「重責を果たし、チームに安心感を与えてくれたね」と目を細めるほどにたくましく成長していた。

 最終成績は打率3割1分7厘、27本塁打、110打点。オフには日本代表「侍ジャパン」の一員に選ばれ、憧れだった日の丸のユニホームにも袖を通した。12月3日の契約更改では5100万円アップの年俸8600万円(推定)でサインし、名実ともにチームの顔へとのし上がった。

 交渉の席では、かつて清原和博、中島裕之らが身につけ、現在は空き番号となっている背番号3への変更を直訴。今オフは「時期尚早」として見送られたが、次代を担うミスターライオンズ候補は強い決意をにじませる。

「そんなに軽いものではないが、責任感を背負ってやりたい。来年また結果を残して3番をもらえればいい」

 飛躍を遂げた若獅子の眼差しは、すでに2014シーズンを見据えている。常勝軍団を支えた偉大な先輩たちの背中を追いかけ、一気に階段を駆け上がる。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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