プロ野球と高校球児の架け橋 「夢の向こうに」の意義とは

プロ選手が行う「野球教室」

 去る12月のこと。プロ野球の現役選手による高校生への実技指導「夢の向こうに」が福島・いわき市の野球場で開催された。プロがアマを指導することは原則として禁止されているが、このイベントだけは指導が許されている。聖光学院を始めとした福島の球児たちが、将来のプロ野球選手を夢見て、また技術の向上を目指して、約4時間の「野球教室」で指導を受けた。

 開催が福島県ということで、いわき市出身のオリックス・小松聖投手、相馬市出身の巨人・鈴木尚広外野手を中心に、東北楽天ゴールデンイーグルスの藤田一也内野手、オリックス移籍が決まった鉄平外野手らが参加。そのほかにも野球評論家の工藤公康氏、田口壮氏らが出席し、熱のこもった指導が行われた。

 ティー打撃で、鉄平が体の使い方を教えると、生徒たちの打球の質が一球で変わった。力のある生徒は飛距離が出た。藤田の教える守備には、生徒たちも驚きの連続で質問が絶えなかった。横浜DeNAの内村賢介も同様に守備や走塁の技術だけでなく、意識の置き方を伝え、「もっと教えたかったですね。高校生なので『もっとうまくなりたい』という気持ちが伝わってきました」と話していた。

 一人の生徒が空いた時間を見つけて、直接、選手に聞きに行くことができるのも、このシンポジウムのいいところだ。教えたい選手と、教えてもらいたい生徒。その両者が交わった時は、球児の吸収力も半端ではない。事実、次の瞬間には、選手の指導通りに実践し、プレーに表れてくることもある。簡単にはできないプレーもあったため、すべてがうまくいくわけではないが、生徒たちはそれを持ち帰り、明日からの課題にしていた。指導者もこの野球教室に参加。生徒たちが選手との会話を終えた後で「部員全員に今、教わったことを伝えなさい」と指示を送っていた監督もいた。

 工藤氏は高校生ではなかなか聞きなれない「体幹トレーニング」の重要性を説いた。指導をする中で、継続することの大切さやこのトレーニングをすることで投手にとってどのような効果があるのかなどを具体的に説明。「ひょっとしたら自分がプロまでいけるのではないか、と思える子が出てくるかもしれない。それだけでもこのシンポジウムは価値があると思います」と好感触を得た様子だった。

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