左肩痛で離脱の巨人・今村信貴投手が秘めていた覚悟

昨年プロ初勝利を挙げた期待の左腕

 悔しさを押し殺すように、巨人の期待の19歳左腕・今村信貴は宿舎へと引き上げていった。春季キャンプ第2クールで左肩に違和感が出て、練習を途中で切り上げた。先発ローテーション候補としてアピールを続けてきたけれども、今後はノースローで調整していくことになった。

 今村は2軍戦でもノーヒットノーランを達成。昨年、プロ初勝利を上げて、ポストシーズンにも登板した。大きなカーブにキレのあるストレート。全盛期の高橋尚成投手を彷彿とさせるような下半身の使い方、壁の作り方が特徴のフォームで、頭角を表してきた。首脳陣も大きな期待を寄せていた。

 まだ3年目の左腕には自分の中で不安があった。

「チャンスをもらっているので、僕は頑張ってアピールをしないといけないと思っています」

 19歳とはいえ、1度、1軍に定着。プロで稼ぐことの喜びや、レベルの高い選手と一緒にやることによる成長を実感した。だからこそ、自分が今いるポジションを死守しなければならなかった。巨人には1、2軍の当落線上にいる投手がたくさんいる。しかも、レベルが高い。争いに勝つためには、いい形で終えた昨シーズンの調子を維持することが必要だと考えた。

 そのため、今村はずっと投げ続けていた。シーズン中は先発や中継ぎの調整で毎日のように肩を作っていた。2軍では先発投手として、登板間隔を空けての調整だったため、中継ぎ投手ほどの忙しさはなかった。そのため、慣れるまで疲労感は倍に感じていた。

 そして日本シリーズでもチームに帯同。シーズンが終わった後はそのまま、2軍の秋季練習に参加し、オフも毎日のようにブルペンで投球練習を続けた。1日100球以上、投げることもあった。「投げて体力をつけて、僕はアピールしていかないといけない立場です」と争いに勝つために、誰よりもブルペンで投げ続けていた。

 先日8日のフリー打撃に登板したときは亀井善行外野手、坂本勇人内野手に対して、すべてストレートで45球。バットをへし折る場面もあり、注目を集めた。開幕1軍へ大きなアピールとなった。成果が出た。しかし、直後、ついに投げ続けた左肩が悲鳴を上げてしまった。

 登板過多が直接的な原因になったかどうかはわからない。ただ、今村はなんとしてでも1軍に食らいつこうとずっと投げ続けた結果、肩に負担がかかったのかもしれない。その若さゆえに、休むことに対して抵抗や違和感もあったのだろう。これは野球の神様が与えた今村への休養なのだろうか。こうなった以上、必要な休養としてとらえて、肩、肘を休めることの大切さを学び、再び、1軍の舞台にもどってきてもらいたい。この試練を乗り越えたとき、またもう一回り、成長した姿を見せてくれることだろう。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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