メジャー復帰まで“身を潜める男” 藤川球児が貫くプロの哲学とは

プロとして、その舞台裏は見せるべきではない

 藤川球児は今、何をしているのだろう? そんな疑問を抱くファンも多いのではないだろうか。

 昨年6月にトミー・ジョン手術と呼ばれる右肘靱帯再建手術を受けたことは、ご存じのとおり。現在、復帰に向けてのリハビリに励んでいる最中だが、日々の報道からは、今リハビリのどんな段階にあるのか、復帰のめどはいつ頃なのかといった情報が、なかなか伝わってこない。

 理由を一言で言ってしまえば、藤川が伝えたがらないから、だ。だが、その背景には、藤川球児という男の持つ「プロ」に対するこだわりがある。

「プロというのは、ファンの皆さんの前でプレーする人できる人のことを言うんですよ。僕はまだその段階にはない。だから、今、復帰に向けて進んでいるステップを事細かに伝えたとしても、それはプロの仕事を伝えているわけではない。今の僕の状態は、まだプロと呼べる段階には達していないんです」

 2月下旬のある日、アリゾナ州メサにあるカブスのキャンプ施設で、藤川はこう語り出した。

 野球を仕事に持つプロとして、ファンの前でピッチングできる状態になるまで、その舞台裏は見せるべきではない、という。阪神で絶対的な守護神として鳴らした男のこだわりは、まるでこだわりのラーメン屋の頑固な店主。自分が納得するモノしか、お客さんやファンの前には出さない。とことん職人気質なのだ。

「ファンが注目するのは、しっかりプレーしている選手。たまに『藤川は何してるんだろう?』と思う人が何人かいるかもしれないけど、大体の人は記事で名前を見た時に初めて『そういえば……』と思い出す程度でしょう。だったら、メジャー復帰を果たすまでは、身を潜めながら準備を怠らなければいいんです」

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