プロが甲子園で見つけた掘り出し物 豊川高校・田中空良投手の魅力とは

仲間意識の強い環境で育った豊川ナイン

 そのピッチングフォームは自分なりに研究して習得した。2回戦の池田高校戦でのこと。あるイニング、田中が3つ目のアウトを取った後、ベンチに帰らずに向かった先はブルペンだった。三塁側スタンドの前にあるところで投球練習を開始。10球前後でやめたが、それは一般的には珍しい光景だ。

 その際、田中を指導する森昌彦コーチは「田中はあの時、体の開きが早いとマウンドで投げていて感じていた。なので、修正を自分でしにいったのだと思う」と説明した。同コーチによると、自分なりに考えて投球するようになったことが成長の証しだという。毎日、自身や相手のビデオを見て研究。今後、自分が野球を続けていくためには何が必要かを追求しながら、練習をしている。

 また、人間性も磨かれている。これは田中だけではなく豊川高校ナインの全員に当てはまることだが、周囲への感謝と人を思いやる心を強く持っている。

 宿舎から甲子園に向かうバスの中では、監督やコーチが、応援団が一生懸命に応援している映像を選手に見せて、自分たちのためにどれだけの人が力になってくれているかを教え込む。そのような教育がしっかりと行き届いているからなのだろう。田中は勝利した後、「スタンドにいるたくさんの応援のおかげで勝つことができる。力になりました」と感謝した。

 さらに豊川ナインは仲間意識の強い環境で育っている。大会期間中に3人の選手がインフルエンザで自宅に一時帰宅した際、田中はゆっくり休むようにとメールを送ったという。他の選手たちもインフルエンザになった選手のバットを使い、ヒットを打つなど、一緒に戦った。今井陽一監督は2人の部屋に行き、ユニホームを受け取り、ベンチに置いた。ピンチになっては「助けてくれよ」と背番号を握り、祈ったという。

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