今季のダルビッシュは何が違うのか 数値から浮き彫りになるその進化とは

ダルビッシュの投球でポイントになる、チェンジアップ

 少し面白いデータがあるのでご紹介しておこう。

 これまで2シーズンは、ストライク率が平均62.5パーセントだったが、今季は67.4パーセントに増加。さらに、奪ったストライクの中でも、ボールがインプレーになった末のストライクが、1年目は25.2パーセント、2年目は22.1パーセントだったのに対し、今季は29.7パーセントにまで上昇している。この数字は「打たせて取る」という新しい形が実践できている証拠の1つになるだろう。

 もう1つ、今季のダルビッシュの投球でポイントとなりそうなのが、チェンジアップだ。

「全部投げられるので新しい球種は覚える必要はない」と言うダルビッシュだが、これまでチェンジアップだけは「試合で使える球ではない」とやや消極的な姿勢を見せていた。だが、このキャンプ中に「(コツを)つかんだ」と開眼。今季2戦目アストロズ戦で5球を投げ、「左打者に対して(配球を)考えさせられることができた」と手応えを語っている。

 以前からマダックス投手コーチは「自分は、スプリットよりもチェンジアップの方が安定している球種だと思う。自信の問題。投げる回数が増えれば、自信もついてくると思う」と話していた。対戦チームは速球とスライダーに注意を払ってくるが、ここにチェンジアップが加われば、配球はさらに読みづらいものになるだろう。

 今季こそ、何か大きなことをやってくれそうな予感に溢れた滑り出しのダルビッシュだが、対戦打者も選りすぐりのメジャーリーガーたちだ。対戦を繰り返す中、打者がどんな調整を行い、ダルビッシュがどんな配球を仕掛けていくのか。今季もまた面白い手の内の読み合いを見せてくれそうだ。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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