「松ヤニ使用反対」を唱える選手がほとんどいない大リーグ その“常識”とルール改正の可能性を探る

公然の秘密になっている松ヤニ使用だが…

 不思議なのは、首に松ヤニを付けたピネダを見て「それはやり過ぎだ」と、監督やコーチ、チームメイトが注意しなかったことだ。1イニング目には首に松ヤニは認められず、2イニング目から目立つようになった。

 おそらく、初回にボールが滑ると感じたため、イニング間に急いで首に付けたのだろうが、マウンドに向かう前に誰かが教えるべきだっただろう。後に、ブライアン・キャッシュマンGMは「チーム全体として恥ずべきことだ」と言っているが、異変に気付けなかったチームにも手落ちがあったことは否めない。

 メジャーリーグの規則によれば、投手はロージンバッグ以外の物質を使用してはならない。もちろん、自分の唾液をつけることも禁止されているし、厳密に言えば、天候の悪い日に投手が指先に息を吹きかけることも、試合前に両軍の監督に同意を確認した上で審判が認めなければならない行為だ。

 だが、レッドソックスOBで殿堂投手のデニス・エッカーズリー氏やヤンキースOBのデービッド・コーン氏も、メディア上で現役時代に松ヤニを使用していた事実を認めているし、ベテラン打者デービッド・オルティスも「みんな松ヤニを使ってるよ」と、松ヤニ使用が“公然の秘密”であることを明かしている。

 昨年のワールドシリーズでも、レッドソックスのジョン・レスターの手のひらに異物が付着している様子がテレビカメラに捉えられているし、2012年にはレイズの中継ぎジョエル・ペラルタが松ヤニ使用で8試合の出場停止処分を受けている。ちなみに、後日ペラルタの関係者も「みんな使っているのに、なんでジョエルだけ処分されるんだ」とこぼしていた。

 松ヤニだけではない。シェービングクリーム、日焼け止めクリーム、整髪用ジェルなどなど、ありとあらゆるものを駆使しながら、乾燥した土地や寒い気候の中で投げなければならない時には、ボールが滑らないように努力を繰り返している。ただし、これはあくまでも“影”の努力であって、ピネダの場合は度が過ぎた。

 言ってみれば、法定速度60キロの道を時速65~70キロで少しだけ急ごうとする車がいる横を、時速100キロの猛スピードで駆け抜けていったようなものだ。目をつむる、という訳にはいかない。

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