敵将も認める完全復活の兆し 黒田博樹の復調を証明する「フロントドア」

スライダーがいいと、いつもの黒田の投球になる

 さらに、鍵となる変化球の精度も徐々に上がってきている。特に、最悪の状態だったスライダーの精度は少しずつ戻ってきた。4月25日に同じエンゼルス相手にヤンキースタジアムで自己ワーストの8失点と大炎上した黒田だが、その時との大きな違いは切れのあるスライダーが増えてきたこと。敵将のマイク・ソーシア監督は言う。

「前にニューヨークで見たときよりも出来がずっとよかった。球威があったし、切れのいいシンカーとスライダーが特によかった。今夜は非常に力強かった」

 軸となる2つの球種の状態が上がってくると、メジャーでも屈指の実力者として認識されている黒田の攻略は難しくなる。結果として7回2/3を5安打3失点。3回の2失点は失策が絡んでいるため、自責点は1。しかも、唯一の自責点は8回2死3塁で黒田の後を継いでマウンドを任されたショーン・ケリーが“500発男”のアルバート・プホルスに適時打を打たれて付いたものだけに、先発投手としてはこれ以上ない働きをしたと言えるだろう。

 チームに勝利をもたらす投球に、ジョー・ジラルディ監督も「スライダーがいいと、いつもの黒田の投球になる。本当に良く投げてくれた」と賛辞を惜しまなかった。

 当然、本人としても手応えのある一戦だったようだ。

「頭で分かっていても体がいうことをきかないときもあります。なかなか頭と体とボールが一致するっていうのは難しいですけど、今日はある程度、自分のイメージと近いボールがいっていたので、それが1番大きかったと思います。自分の頭と体が噛み合ったという感じは(今年は)今までになかった」

 昨季終盤から続く不調で、年齢による衰えなどを指摘する声は徐々に大きくなっていた。ただ、この日の力強い投球で、その心配は杞憂であることを証明した。「フロントドア」とスライダーの精度は、黒田の調子をはかるバロメーター。反撃への準備は間違いなく整ってきた。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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