田中将大の白星を守り抜いたイチローの美技をヤンキース監督も絶賛

ヤンキースを救ったイチローの見事なプレー

 打球の着地点を誰もが息を飲んで見つめていた。そのほとんどがヒットと、そして田中将大の白星が失われることを覚悟した。ヤンキースが2-1とリードして迎えたアスレチックス戦の8回1アウト、1、2塁でのことだった。

 それまでチームの4連敗を止めるべく、田中将大投手が6回を1失点で抑え、試合を作った。後は託されたリリーフ陣、そしてアルフォンゾ・ソリアーノに代わり、ライトの守備に入ったイチローらが守り切るだけだった。

 イチローは7回にソリアーノの代走で途中出場。8回からは守備固めとしてフィールドに立っていた。

 アスレチックスの4番、ブランドン・モスの打球が右中間方向へ、浅い飛球となった。落ちていれば、2塁走者が生還し、同点となっていただろう。

 好スタートを切ったイチローは、センターのジャコビー・エルズベリーが追ってこないことを確認すると、スピードを上げて落下点へ。スライディングキャッチを決めて、アウトにしてみせた。その瞬間、ヤンキースタジアムは大きく沸いた。

 イチローはこれまでも、右中間を襲った打球にスピードを緩めず、好捕したことが何度もあった。その時も最初に確認するのが、味方の選手が追ってこないかどうか。自分の判断だけで打球を処理しても良いかを瞬時に判断し、迷わず落下点に入る。こうしてピンチの芽を摘んできた。

 試合後、ヤンキースのジラルディ監督も「試合の流れの中でとても大きなプレーだった」と9回の守備でファーストゴロを体で張ってアウトにした一塁手のマーク・テシェイラの守備と合わせて、その守りを高く評価した。

 この試合から、故障者リスト入りしていたカルロス・ベルトラン外野手が指名打者で復帰。相手先発の左右によって、右打者のソリアーノと出場機会を分け合っているが、主砲の復帰でまた出場機会の減少が予想される。それでも毎日、準備を重ね、与えられた少ない機会で輝きを放つイチロー。この日、田中の9勝目をアシストしたように、不調のヤンキースを救うプレーをファンは待ち望んでいる。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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