本拠地創設100周年のカブスで起きた“事件” 非公式マスコットがバーで人を殴る!?

なぜ、カブスは非公式マスコットを訴えたのか?

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非公式マスコット「ビリー・カブ」を紹介する動画。
※画像はサイトのスクリーンショットです。

 この5人は、背番号78のユニフォームを身にまとったビリー・カブというクマの着ぐるみを着て、球場を訪れたファンと記念撮影をするなど、ファンの間では誰もが知る存在となっていた。7年もの間、見て見ぬ振りをしてきたのに、なぜ今さら訴えることになったかには、2つの理由がある。1つは公式のマスコットが誕生したこと、もう1つはビリー・カブがバーで人を殴る映像がYouTubeで広まったことにある。

 確かに、球場を訪れたファンの中には、ビリー・カブが球団の公認マスコットだと思っていた人も多い。公認マスコットにしては着ぐるみそのものが薄汚れているし(かなり)、記念撮影をしたファンにチップを要求することもあった(通常、球団の公式マスコットは金銭を求めない)。煙たい存在ではあったが、ファンがそれなりに喜んでいるので放置しておいたというのが本音だろう。そこで、クラーク・ザ・カブの誕生を機に、偽物は排除しようという動きに出たのも頷ける。

 そして、最大の引き金になったのは、4月5日にリグリーフィールド近くのバーで起きた事件だ。

 バーの中にいたビリー・カブに近寄った男性ファンが、背後から着ぐるみの頭部を取り上げた瞬間、中に入っていたパトリック・ワイアー氏が振り向きざまに男性ファンに殴りかかった。この様子を撮影したビデオ映像がYouTube上で広まった上に、男性ファンは訴訟を起こすことに。球団としては、ビリー・カブとは一切関係がないことを明らかにするためにも、偽物を訴えるアクションに出たのだろう。

 その他、訴状では「来場客、チケットホルダー、ファン、その他リグリーフィールド周辺にいる人々に対し、無礼、不遜、軽蔑したような言動」を取ったとされ、ウェブサイトやソーシャル・メディアからのビリー・カブの排除と、球団が負ったイメージの損害賠償金(金額は不明)とこれまでの売り上げの返還を求めている。

 7年前、ワイアー氏たちがどんな思いでビリー・カブを始めたかは分からないが、契約と訴訟が社会の根幹をなすアメリカでは、いささか甘い判断だったのかもしれない。

【了】

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非公式マスコット「ビリー・カブ」を紹介する動画

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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