なぜプロ注目の選手たちは今夏の甲子園に届かなかったのか

安楽智大、高橋光成、小島和哉……県大会で散った注目選手たち

 8月9日に第96回の夏の甲子園が開幕する。昨夏は2年生エースの高橋光成の活躍で群馬の前橋育英高が優勝。3回戦で敗退したが済美高の安楽智大投手のスピード(155キロ)にもしびれた。浅間大基、高濱祐仁ら2年生主体のチームで3年生はスタメンにたった1人と若いチームで神奈川を勝ち抜いてきた横浜高なども注目された。

 今年も春夏連続出場や2年連続出場を果たしたチームもある中で、上記の注目選手たちは甲子園には届かなかった。昨年のセンバツを2年生ながら主戦投手で制した浦和学院の左腕・小島和哉投手、今年のセンバツで奪三振ショーを披露した栃木・佐野日大の左腕・田嶋大樹投手の姿もない。昨年2年生で活躍した選手が早々に地方予選で消えてしまったケースも少なくない。今センバツの出場校も、あと一歩のところで逃している。

 なぜ、そのようなことが起こってしまったのか。プロ野球のスカウトの言葉から要因の一部を挙げてみたい。

 あるスカウトは言う。

「今の時代、対戦高校のデータや映像があふれているというのもあるのかもしれない」

 動画サイトに名前を入れて検索すれば、その投手の映像はすぐに出てくる。甲子園に出場したり、全国レベルの投手になればなるほど、その選手の映像は多く確保できる。スマートフォンを片手に、通学途中にだって相手の分析が可能だ。そのスカウトの話す通り、映像の氾濫が、選手を丸裸にしてしまっているのかもしれない。

 強豪を撃破したある投手の中には「昨年、打たれて負けたのがすごく悔しかった。その後もずっとそれを忘れないように映像を見て、毎日ノートに(分析など)を書いていた」と特定の選手に対する悔しさを1日も忘れずに努力し、最後の夏に勝利した者もいた。携帯やパソコンでの分析も欠かさなかった。

 また別のスカウトは言う。

「(動画サイトでの)映像からの情報が増えているというのもあるかもしれないが、もっと言えるのは、そういうデータを基に相手チームが束になって戦っている。その成果だと思う」

 そのスカウトはプロ注目の大物たちが敗れたゲームを見て、そう感じたという。

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