30回目の甲子園は「鬼」から「仏」へ 現代っ子を導く70歳ベテラン監督の手腕

選手に野球を楽しませる野球理論へと変えた

「このチームでは自分が変わらなくては誰もついてこない」

 百戦錬磨の指揮官は徐々に時代の流れとともに、自分を変えた。失敗をしても、笑顔で選手を出迎えるようになった。

 今年の夏、阪口監督はチームが甲子園入りする前夜に選手たちへプレゼントを考えていた。

「これまで29回、開幕前の甲子園練習でバッティング練習はしたことがなかったんだ」

 1点を守りきる野球を追求し、守備や走塁練習ばかりを徹底してきた。しかし、今年は「バッティング練習をやろうと思っているんだ。この広いグラウンドで打たせてあげたい」とこれまでとは違ったメニューを考えていた。

「子供たちにね、いい思い出を作ってあげたいんだよ。子供らしい高校野球というかね、せっかくこんなにも広い甲子園という舞台に立つ。高校野球も文武両道。勉強でもあるからね。それにね、選手に野球を楽しませたいという野球理論に変えてみた、といったところです」

 実際は悪天候でグラウンド状況があまりよくなかったため、広いグラウンドは使用できず、室内での練習になったという。ただ、そこには野球と選手を愛する気持ちがにじみ出ていた。

 今年は古巣の東邦も出場。阪口監督にとっても思い出に残る大会となりそうだ。出場校の中で2番目となる高年齢の監督だが、もしかしたら一番時代に合った野球をする指導者なのかもしれない。経験というスパイスを入れた大ベテランの采配にも注目。大垣日大は大会2日目の第4試合、茨城代表の藤代高校と対戦する。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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