サイ・ヤング賞投手の古巣に向けた全面広告が米国で感動を呼ぶ

エースでありムードメーカーだったプライス

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プライスが地元紙に出した全面広告

 2007年のドラフトで全米1位でレイズに指名されたプライスは、翌年のシーズン終盤にメジャーデビュー。地区制覇を果たしたチームでポストシーズンのロースターに入り、リリーフでリーグ制覇に貢献。2012年にはサイ・ヤング賞を受賞するなど、その後はエースとして活躍し続けた。

 また、ムードメーカーとしても重要な存在で、登板日以外はダッグアウトでマドン監督の近くに陣取り、本塁に生還してきた選手や降板した投手を真っ先にハイタッチで迎え入れていた。エバン・ロンゴリアと並ぶチームの顔だった。

 限られた予算でチーム編成を行うレイズは、有望な若手がスター選手に育つと高額な年俸を払えなくなるため、他球団にトレードに出し、代わりに再びホープを獲得することで、チーム力を維持している。毎年、ハイレベルなア・リーグ東地区でチームを優勝争いに導くフリードマンGMとマドン監督の手腕は高く評価されているが、当然、このチーム事情についてはプライスも十分に理解していた。

 昨オフにもトレード候補の目玉とされていたが、MLBとNPBの間で新ポスティングシステム(入札制度)の締結が遅れ、田中将大の去就が決まるのがずれ込んだ。先発投手の市場での動きが停滞したことが影響し、レイズに残留したプライスは、そのことを心から喜んでいた。

 ただ、今オフにはフリーエージェント(FA)となるだけに、レイズがプライスの見返りとして若手選手を獲得するには、この夏が最後のチャンスだった。本人がチームを離れる覚悟を決めていたとしても、不思議ではない。自分のトレードが、愛着のあるレイズのためにもなるからだ。実際に、レイズはタイガース、マリナーズとの三角トレードで左腕ドリュー・スマイリーとショートの若手有望株のウィリー・アダムス、ユーティリティープレーヤーのニック・フランクリンの3選手を獲得した。

 FOXスポーツ電子版は「デトロイト・タイガースのマウンド上で新しい章をスタートさせたデビッド・プライスだが、火曜日の朝、彼はまだタンパベイを想う気持ちがあることを公にした」との書き出しで、この広告について取り上げている。今後、メジャーを代表する左腕であるプライスが予算の限られたレイズに復帰できる可能性は極めて低いこともあり、その内容が感動的だとして米国内でも話題となっている。

 同じようにレッドソックスからアスレチックスにトレードされたジョン・レスターは、プライスよりも前の今月3日に、古巣の地元紙ボストン・グローブに感謝の全面広告を出した。この手法はメジャーで新たな流行となりつつあるが、プライスの「手紙」を読めば、その価値は大いにあると言えそうだ。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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