今はまだ本来のスタイルは“封印” 藤川球児が思い描く復活ロード

「自分が目指すのはただ帰ってくることじゃない」

 話をもう一度8月6日ロッキーズ戦に戻そう。

 4-8と4点を勝ち越された6回、なおも無死一、二塁という場面で、藤川はマウンドへ向かった。

 先頭ブラックモンにカウント1-2からの4球目カットボールで死球。

「カットボールを狙ってきたら(体を)開いて空振りもあった。開かなかったから(死球が)当たったんですけど、当たらなかったら次は(フォークを)落とそうと思っていた」

 無死満塁としたところで次打者ラトレッジは二塁への併殺打。この間に先発アリエッタが残した走者が1人生還している。モーノーを左翼フライに打ち取り、1イニングを投げて無安打無失点。結果としては問題のない登板だったが、その翌日、藤川自身はこう話した。

「あれで満足してちゃダメでしょ。もしクローザーという立場だったら、1点取られたところで失敗ですから。自分が目指すのは、ただ帰ってくることじゃなくて、その先。帰ってきたから終わりじゃなくて、この後結果を残していかなければならない。そしたら、やっぱり昨日の内容で満足したらダメですよね」

 メジャー復帰は「現実問題スタート」であっても、視野を大きく持った場合には「完全通過点」となる。そんな藤川の感覚は、何よりも正しいのかもしれない。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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