驚きの守備隊形がメジャーで出現 極端なシフトは野球の本質を変えてしまうのか

守備シフトの流行により公式記録が意味をなさなくなる恐れも

 そもそも、守備隊形のシフトを流行らせたのは、レイズのジョー・マドン監督だ。頭脳派で知られるマドン監督は、現職に就く前、2000~2005年はエンゼルスでベンチコーチをしていた。この時から打者の打球が飛んだ位置を示すチャートを見ながら、傾向と対策について考えていたというが、マドン監督が発明者というわけではない。

 1946年には、当時ホームラン打者として名高かったテッド・ウィリアムスに対して、インディアンスを率いたルー・ブードロー監督が、三塁方向には三塁手を置いただけで、それ以外の野手6人をすべて右方向に移動させるシフトを敷いている。

 ところで、シフト流行の影響は思わぬところにも表れている。公式記録(スコア)だ。野球のスコアをつける時、打球が飛んだ場所ではなく、処理した野手のポジションが重要になってくる。例えば、一、二塁間へ飛んだ打球を二塁手が捕球し、一塁に送球してアウトを取った場合は、通常「二塁ゴロ」となる。

 だが、打球を引っ張る左の強打者に対してシフトを敷いた場合、遊撃手か三塁手を一、二塁間に移動させ、野手3人を置く場合がある。この時、同じく一、二塁間に打球が飛んでも、打球を捕球した野手が遊撃手であれば「遊撃ゴロ」、三塁手であれば「三塁ゴロ」という記録になる。

 試合を直接見ていなかった人があとから記録を見た時、「三塁ゴロ」と記載されていたら、一、二塁間への打球は想像しないだろう。シフトが敷かれていた場合には、注意書きを添えるなりしなければ、記録として意味を成さなくなってしまう。

 ビデオ判定の導入だったり、ワイルドカード枠の増設だったり、メジャーはいろいろな形で時代に即した変化を遂げているが、守備隊形のシフトがさらに浸透していくのであれば、バッティングのあり方や記録の付け方も、何らかの変化が求められるのかもしれない。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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