昨季禁止薬物問題に揺れた2人の主砲がPS躍進チームを牽引する皮肉

昨季のスキャンダルの余波を受けた今季のメジャーリーグ

 メジャーを揺るがした大事件は、今季も球界に影響を与えている。昨年8月、ヤンキースのアレックス・ロドリゲス内野手をはじめとした計14選手に対して、薬物規定違反による出場停止処分が科された。マイアミのクリニックがメジャーリーガーに薬物を提供していたと地元紙が報じたことで明らかになったスキャンダルの“余波”は、実は今季のメジャーに明確に表れている。

 まずは、メジャーで十分な実績を誇りながら出場停止処分を受けた、主な選手たちの今季の状況を振り返ってみよう。(最初の2人以外はすべて50試合に出場停止処分)

1、アレックス・ロドリゲス内野手(ヤンキース)

 当初は悪質な手口などを理由に211試合の出場停止処分が科されたが、異議申し立てを行い、昨年は試合に出続けた。MLB側と泥沼の争いに発展し、今年1月に今季の全162試合の出場停止が確定。ただ、ヤンキースが2年連続のプレーオフを逃しながらも、Aロッド不在を嘆く声はほとんどなかった。来季には復帰する予定で、早くも注目され始めているが、全盛期のような成績を残すことは難しいだろう。

2、ライアン・ブラウン外野手(ブルワーズ)

 2011年のナ・リーグMVPは、同年オフに1度、薬物使用疑惑が持ち上がったが、異議申し立てを行い、出場停止を免れた。しかし、昨年の事件では再び名前が挙がり、今度は薬物使用を認めてシーズン終了までの65試合出場停止に。今季は7月頃まで打率3割付近をキープし、首位を快走するチームの躍進を支えたが、その後は急失速。ブルワーズもプレーオフ進出争いから脱落していった。打率2割6分6厘は自己最低。19本塁打、81打点も、出場試合数の少ない昨年を除くとワーストだった。

3、ネルソン・クルーズ外野手(オリオールズ)

 FAで今季から加入したオリオールズで主軸を任され、シーズン途中からは不動の4番に。主に指名打者として打点と本塁打を量産し、チームの17年ぶりの地区優勝に貢献。自己最多の40本塁打でホームラン王に輝き、108打点もキャリアベストだった。レンジャーズ時代も勝負強さを発揮していたポストシーズン(PS)では、レギュラーシーズンの勢いを持続し、タイガースとの地区シリーズでは全3試合でマルチ安打の打率5割。さらに、2本塁打、5打点の活躍で難敵に完勝した。青木宣親擁するロイヤルズとのリーグ優勝決定戦でも、キーマンの1人となる。

4、ジョニー・ペラルタ(カージナルス)

 FAでカージナルスに加入し、ショートのレギュラーとして地区制覇に貢献。打率2割6分3厘はキャリア通算(2割6分7厘)に近い数字で、21本塁打、75打点も期待通りの数字と言える。勝負所のシーズン後半戦ではクリーンアップを任され、ドジャースとの地区シリーズでも4試合中3試合に4番で出場。打率2割1分4厘で打点、ホームランは0だが、王手をかけて迎えた第4戦では2点を追う無死1塁で、相手エースのカーショーからセンター前ヒット。続くアダムスの逆転3ランにつながる貴重な安打で、シリーズ突破に貢献した。

5、フランシスコ・セルベリ(ヤンキース)

 49試合の出場ながら、打率3割1厘を記録。オープン戦から打撃好調で、開幕前には他チームの獲得候補にも名前が挙がった。先発した試合では存在感を放ち、リードも良く、新加入のブライアン・マッキャンの控えとしてはもったいないほどのプレーを見せた。開幕直後の右太もも裏による離脱は、ヤンキースとしても痛かった。

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