巨人の「百戦錬磨」と阪神の「若さ」 思わぬ形で勝負を分けたバッテリーの経験値

藤浪の「荒れ球」に苦しんだ巨人打線

 一方、「20歳の藤浪、鶴岡さんのバッテリーは力一杯、腕を振っていったことでいい意味で荒れ球がはまって好結果になっていました」。ピッチングにすさまじい勢いがあった。

 適度なコントロールの荒れ具合、150キロ台のスピードボールが要所に決まっていたことで巨人打線に的を絞らせなかった。これが好投の要因となったと見ている。

 捕手の視点から試合を見た中谷氏は「そういった意味では気持ちもリズムもコントロール出来ていた内海が点を失い、細かいコントロールを気にせず腕を振り、気持ちを全面に出した藤浪がいい結果を出したという面白い展開になりましたね」と話した。

 巨人は満塁のチャンスでセペダがゲッツーに倒れるなど、決定打が出なかった。ただ、中谷氏は「巨人打線は試合間隔が空いている感じもなく、あと1本が出なかっただけでした」と話す。

 本塁打を打った阿部、長野や坂本にもヒットが出ており、「心配はいらないと思います。試合勘が戻ってきてないということはない」。結果的にチームは1点しか取れなかったが、あくまで「(藤浪の)荒れ球にはまっただけだと思います」と分析しており、2戦目以降、点が取れないということはなさそうだ。

 これで巨人のアドバンテージはなくなった。「カタチ的に1勝1敗になってこれから本当に互角の勝負になりそうです」と話す中谷氏は次戦以降も捕手の視線から試合を注目して見ていく。

【了】

中谷仁 プロフィール

和歌山県出身。智弁和歌山高校で1996年センバツ準優勝。1997年夏の甲子園で京都の平安高校を破り、全国制覇。同年の阪神ドラフト1位で入団。2位は現オリックスの井川慶だった。2005年オフに金銭トレードで楽天に移籍。09年には野村克也監督の元、クライマックス・シリーズにも出場。2012年に巨人に移籍。この年に引退し、ブルペン捕手に。WBC日本代表のブルペン捕手としてチームに帯同。現在は大阪の野球教室「上達屋」で子供を指導。グラウンドの外から野球を勉強中。集英社「Sportiva」のウェブサイトで「エースの響き」を連載中。

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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