巨人は再び3連敗から巻き返せるか 土壇場で響く、原辰徳監督の言葉力

「原監督と巨人には苦しみながら3連覇を達成した底力がある」

 その時、選手は監督から、追い込まれて切迫しているというよりもむしろ、この状況をどのようにはねのけてやろうかという闘争心を感じ取っていた。

 原監督自身も現役時代の1989年、巨人-近鉄の日本シリーズで3連敗から4連勝を飾り、日本一になっている。監督になってからも苦しんだ末の勝利を経験。大逆転はお手の物。いかに逆転するか、その方策に思考を巡らせている。

 中谷氏は「負けた時は日本シリーズ行きはかなり難しくなったと正直思っていましたからね。それでも巻き返した。あの『徳俵~』という言葉は心強かった。今年も苦しみながらも3連覇を達成した底力が監督と今のチームにはあります。

 実際、やはり阪神は強いです。勢いをそのままに勝利をつかんでいるといった感じを受けます。状況としては厳しいですが、この面白い伝統の一戦のクライマックスシリーズをまだまだ盛り上げていってもらいたいです」

 2年前に前例があるとはいえ、厳しい状況に変わりはない。だが、ほんのちょっとしたきっかけで流れが変わることもある。

 阪神と巨人の両方に所属した経験があり、複雑な思いもあるが、2年前の奇跡の逆転劇を知る男はこの状況で原監督がどんなドラマを描くのか、巨人の意地に注目している。

 ◇中谷仁 和歌山県出身。智弁和歌山高校で1996年センバツ準優勝。1997年夏の甲子園で京都の平安高校を破り、全国制覇。同年の阪神ドラフト1位で入団。2位は現オリックスの井川慶だった。2005年オフに金銭トレードで楽天に移籍。09年には野村克也監督の元、クライマックス・シリーズにも出場。2012年に巨人に移籍。この年に引退し、ブルペン捕手に。WBC日本代表のブルペン捕手としてチームに帯同。現在は大阪の野球教室「上達屋」で子供を指導。グラウンドの外から野球を勉強中。集英社「Sportiva」のウェブサイトで「エースの響き」を連載中。

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フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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