高校生のドラフト指名はどの程度戦力につながっているのか 高校生指名のリスクとメリットとは

「高校生の戦力化」の実情を探る

 2000年代初頭のMLBオークランド・アスレチックスの奮闘を描いたノンフィクション『マネー・ボール』には、当時のアスレチックスが「ドラフトで高校生を上位指名するのは分が悪い」と判断していたという記述がある。

 その理由としては、マイナーリーグを経てメジャーリーグまで這い上がってくる選手の割合を調べると、高校を卒業した時点で球団と契約を結んだ選手の数字が高くないことなどが挙げられていた。

 高校生の指名は将来性への投資で、大学生や社会人に比べれば確実性は低いという考え方は日本でも一般的なものだ。しかし、実際には指名された高校生はどの程度一軍の戦力になっているのだろうか。

 そこで1996年から2006年のドラフトで指名された選手の一軍出場状況(野手は打席数、投手は投球回)を調べ、高校生の戦力化の実情を探ってみた。

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ドラフト指名選手の出身別通算打席・投球回(96~06年 年度別)

 最初の図は、同じ年に指名された選手の2013年終了時までの出場状況を調べ、「社会人」「大学生」「高校生」別に機会の多かった順に値を並べたものをグラフにし、重ね合わせたものだ。ここでは、赤で示した「高校生」と他との関係が分かりやすいように重ねている。

 高さは出場機会を示しており、尖った部分は同世代におけるスター選手が記録した数字となる。横幅は選手の数を示し、横幅のある年は、一定の活躍をする選手がたくさんいた選手層の厚い年ということになる。

 例えば、1996年の野手のグラフで、「社会人」が高さと横幅、両方で目立っているが、これは小笠原道大(NTT関東)、和田一浩(神戸製鋼)、谷佳知(三菱自動車岡崎)、松中信彦(新日鉄君津)ら現在も現役続行している長命選手が一挙に入団した年だから、といった具合になる。

 全体を見渡すと、特に野手でかなりばらつきがあり傾向を見つけるのは難しい。ただ、投手の横幅=選手層は、主に「社会人」「大学生」がつくりだしている様子がうかがえる。野手も2000年を過ぎたあたりからは2005年を除いて似た傾向が見られるが、それ以前は「社会人」「大学生」「高校生」が拮抗している。この時代の「高校生」は早い段階から出場機会を得ていた可能性が高い。

 グラフの高さに注目し、多くの出場機会を得た選手をどれだけ輩出したかに着目すると、野手、投手とも「高校生」は健闘しており、グラフの尖った部分が「社会人」「大学生」に負けずに伸びているのがわかる。

 高校生でドラフト指名を受けた選手は長く現役生活を送ることができる。早めに一軍レベルに達すれば、当然多くの出場機会を積み重ねることができるが、そのメリットが表れているのだろう。

 実際の貢献を知るには、成績が悪くても我慢して起用されていた期間がどの程度あったかなどにも目を向けなければいけないが、高校生の中からもコンスタントに優れた選手が生まれているのは間違いなさそうだ。

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