野球への変わらぬ熱量が伝わってくる2014年シーズンのイチロー語録

「今日から162試合やれと言われても、僕にはできる」

 イチローの話は、時には野球から外れることもある。今年、特に注目していたのは、ニューヨークで開催されていた全米テニスで錦織圭が快進撃を続けたこと。若い才能が、自分と同じように世界のトップで結果を残したことに、興奮を隠せなかった。ジョコビッチを破って決勝進出を決めた時には、こう明かしている。

「今日は俺のことなんかどうでもいいよ。いやあ、すごいね。すごいという表現はちょっとダサイけど、気持ちがいい。だって圧倒してるもんね。相手は1位でしょ。なんか素人が見てても翻弄してるもんね。いやあ、気持ちいいっすよ」

 本拠地最終戦となった9月25日のオリオールズ戦では、今季限りで引退したデレク・ジーターがサヨナラヒットを放った。あまりにも劇的な展開にイチローも驚きを隠せず、改めてジーターの魅力についても語っている。

「まずこの展開になることがありえないというか、漫画でもやり過ぎですからねぇ。それが目の前で起きて、それで本当に決めるんだからねぇ。考えられない。(ジーターの魅力は)ありのままの人だから、ということに集約されると思いますね。ジーターの場合、やってることに言ってることが伴っているから、だから人の心が動く。悪いことを見つけようとしても、ないもんね。人間、欠点はあると思うんだけれども、この人に関しては欠点がないことが欠点。もうあり得ない人だね」

 そして迎えた9月28日のボストンでのレッドソックス戦。シーズン最終戦が終わった後、周囲から見れば苦しいシーズンを、イチローはどう振り返ったのか。

「いつか自分の支えになっていく経験はあると思いますが、もちろんその中に加わる時間だったと思ってますねぇ。自分の支えになる時間だった。今後、僕を支える時間だと思います。『なかなかこれ以上はない』という時間かなぁ。プラスに考えられることなんかいっぱいありますよ。マイナスが思い浮かばないくらいですね」

 そして、昨年との違いについて、ポジティブな言葉を残している。それは、来季に向けての意気込みにも聞こえた。

「ただ、今日から162試合やれと言われても、僕にはできる。今から162試合やれと言われても、何の問題もない状態にある。去年のシーズンは最後は半信半疑で何とかいい形になっていたかなと思っていたんだけど、今年は最後まできっちりと自信を持ってグラウンドに立てる自分がずっといた。そういうことかなぁ」

 今季終盤にはオリックス時代の1994年から21年連続となるシーズン100安打をマーク。王貞治氏の日本記録に到達するなど、今年も節目の記録を打ち立てた。

 シーズン終了後、MLBネットワークの番組に出演し、来季もメジャーでプレーする意志を明言したイチロー。その言葉からは、渡米した14年前から変わらぬ熱量が伝わってくる。FAとなったが、野球史に名を刻む安打製造機を求める球団は、まだまだある。来季もどんな名言を残してくれるのか、楽しみでならない。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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