ヤクルト浮上の起爆剤に? 成瀬善久獲得がもたらす効果とは

成瀬の存在が投手陣再建の足がかりとなる可能性も

「ロッテのエース」というイメージで考えると、成瀬を「ヤクルトのチーム平均レベルの失点率でローテーションを回す」という役割を埋めるピースとして考えるのは低い評価に映るかもしれない。

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成瀬善久の成績推移(2006~14)

 成瀬の成績推移を振り返ってみると、何よりも光るのは安定して伸ばしてきた投球イニング数だ。ここ数年は三振を奪う割合(K%)は下がったが、制球力は変わらず四球の割合(BB%)は低く抑えている。これを強みに投球イニングを伸ばしてきたことがうかがえる。

 今シーズンは9イニング当たりの失点を5点近くまで悪化させたが、それでも投球イニング数は140以上を記録した。ロッテ投手陣の台所事情もあったのだろうが、調子が上がらないシーズンにおいてもなんとか乗り切り、先発投手としての役割を果たす試合もつくっていたことがうかがわれる。

 マイナス面としては、フライを多く打たれる投手であることが挙げられる。その結果本塁打を打たれる割合(HR%)も高くなっており、パ・リーグに比べ狭い球場の多いセ・リーグ、特に狭い神宮球場を本拠地にするヤクルトへの移籍は、成績を現状より下げる可能性はある。

 そうしたマイナスも考慮した上で、成瀬が確実に越えられると想定できるラインは「ヤクルトのチーム平均レベルの失点率でローテーションを回す」といった辺りになる。

 しかし、ヤクルトというチームであれば、成瀬がそうした役割を果たすだけでも現状からの改善は果たすことができるし、古野や木谷などを短いイニングに集中できるリリーフに回せばパフォーマンスを上げ失点減に貢献できる可能性もある。得点力は備えているだけに、さらに小さな改善を積み重ねれば、得点と失点の収支をゼロ付近に持っていく道も開けてくる。

 また、確度は下がるが成瀬がパフォーマンスを取り戻す可能性も当然残っている。もし成瀬がローテーションの軸を担う形になれば、計画的な投手の運用が可能になり、ここ数年展望が見えなかった中長期的な投手陣の再建の足がかりになるだろう。

 3年6億円(推定)という契約は少し高く映るかもしれない。補償で選手を失うという面も見逃せない。だが、成瀬がヤクルトに最低でも現状の改善をもたらし、さらなるメリットを生む可能性があること、ある程度のイニングを担える先発投手自体が市場にそうは出てこないことなどを考えると、今回のヤクルトによる成瀬獲得は十分理にかなったものと言えるだろう。

【了】

DELTA・大南淳・秋山健一郎●文  text by DELTA OMINAMI,J. AKIYAMA,K.

DELTA プロフィール

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート3』が4月5日に発売。

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