黒田博樹の引き際の美学 Mr.オクトーバーの言葉にも耳を傾けた右腕

「引退した人の話というのは、本当にためになる」

 レジー・ジャクソン氏といえば、メジャー史に名を残す人物。アスレチックスやヤンキースなどで活躍し、ポストシーズンで無類の勝負強さを発揮したことから「Mr.オクトーバー」と呼ばれる。実際に、キャリア21年で2度のワールドシリーズMVPを獲得。シーズンMVP1度、本塁打王4回、打点王1回、オールスター出場14度を誇り、1993年には野球殿堂入りも果たしている。

 そんな“レジェンド”から、どんな話を聞いたのか。その時のことを、黒田はこう明かしている。

「引退に対すること(気持ち)とか、色んなことを話してもらいました。自分がヤンキースに入った時から気にかけていただいていたみたいで、向こうから来てくれて。引退した人の話というのは、本当にためになる」

 その表情は充実感に満ちていた。

強い覚悟を持って試合に臨む姿は広島にも好影響を与えるか

 その後に迎えた昨年のレギュラーシーズンでは、ヤンキースの先発ローテーションを1人だけ年間通して守り抜き、11勝9敗、防御率3.74と好成績を残した。そして、昨季最終登板の日には、2013年シーズン限りで引退した元チームメートのアンディ・ペティット氏にも去就についての助言を求めたことを明かしている。

 先人たちのアドバイスも聞きながら、自分の中で熟考を重ね、着実に前に進む。黒田はこうして、偉大なキャリアを積み重ねてきた。

 マウンドに上がることを「苦しさしかない」と表現する右腕は「(現役続行を決断するには)それをはね除けるパワーがあるかどうかと、あとはメンタル的にどこまで自分をプッシュしてやっていけるかという、そういう部分での判断が難しいと思う」と話す。

 今オフも葛藤の末に現役続行を決めたはず。強い覚悟を持って1試合1試合に臨む姿は、若手だけでなく、ベテランの投手陣にもお手本になる。黒田が広島にもたらすものは、とてつもなく大きい。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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