鳥谷のメジャー断念の舞台裏 球団スカウトの「あと3年早ければ」の声

ブルージェイズは心底、鳥谷を気に入っていたが……

 だが、今回の場合、鳥谷を心底気に入っていたブルージェイズは、獲得に向けてボラス氏と何度か接触を図っている。だが、ボラス氏側は3年契約を譲らず、1年程度の短期契約を目指していたブルージェイズとは相容れず、正式オファーにまで至らなかったという。今年34歳を迎える内野手、かつメジャーでの実績がない選手に3年契約を与える球団はほとんどないだろう。結局、ブルージェイズはアズドルバル・カブレラ獲得に方向転換したが、遊撃でのプレーを希望したカブレラはレイズと1年契約。ブルージェイズは二塁補強はせずに、守護神獲得に専念するようだ。

 敏腕代理人として名高いボラス氏の手腕には賛否両論があるが、高額だったり長期だったり、選手にできるだけいい契約を勝ち取ろうという姿勢は間違っていない。ボラス氏自身がマイナー時代に苦労した経験を踏まえてのアドバイスがあるからこそ、球界一とも言われる多数のクライアントを抱える代理人となった。鳥谷がオフに入って早々に、かつてアドバイスを受けていたリック・サーマン氏から代理人をボラス氏に変えたのも、頼もしさを感じたからだろう。そもそも鳥谷自身が複数年契約を望んでいたと聞くだけに、やはり縁はなかったのかもしれない。

 もし阪神に早々に断りを入れ、1年契約でもマイナー契約でもいい、と、進路をメジャー挑戦に一本化していたら、どうなっていただろう。おそらく、今頃どこかのチームと契約を終えて、2月の渡米に向けて準備を進めていたかもしれない。だが、阪神も選択肢の中に含めたままにしたのは、11年を過ごしたチームへの愛着やファンへの思いを捨てきれなかったのだろう。

 いろいろな「たら・れば」を考えれば考えるほど、やはり鳥谷は阪神に戻る運命にあったのかもしれない、と思えてくる。運命ではなかったとしても、最終的にはそれが本人の選んだ道。時折「もし鳥谷がメジャーに来ていたら……」と想像しながら、「生涯トラ」を決断した思いにエールを送りたい。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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