オリックス大補強の舞台裏 改革を託された男の哲学(中)

球界の常識と独自の経験に基づく組織改革、「熱意がある人間が生き残る」

 加藤氏は当時をそう振り返る。まさか2年目に優勝できるとはと内心で驚きつつも、目標を遂げた年のオフに退団を決意。今度はオリックスのチーム改革を託されたのだった。

 思い起こせば小学3年生のころから、ソフトボールのチーム編成を担い、どうやれば勝てるかを必死に考えるような子供だった。監督やコーチまで自分で探し、大会にもエントリーした。「僕の中では8、9歳のころのその体験が原点かもしれませんね。ルールなんて最初はよくわからない。3つ上の学年に勝つにはだれを潰せばいいかとかそんなことばかりずっと考えていた」。加藤氏はそう苦笑する。

 そして今や、プレー経験のなかった野球界でその辣腕を振るうまでになった。

 人生経験が多岐に渡るからこそ、球界の常識にとらわれない。「僕はユニフォームを着てなかったから、ユニフォームを着ていたとか、着ていないとかでなくこの野球界に対して、熱意がある人間が生き残らないといけないと思っていますね」。そう力を込める。

 加藤氏の持論。それは全チームが勝てる力を秘めているということだ。だが、その力を勝利に結びつけられていない組織は少なくない。

「やる気は12球団、みんなあると思う。なぜなら、自分がプロとして野球を続けている限りはやる気はあるのが当然のことだから。ただ一方でその気にさせない組織とか空気がある。途中からみんな諦める。俺はこの監督のもとでは無理だ、このコーチとは合わない、このフロントとは合わない……。でも、それはすべて負ける時の言い訳。僕は言い訳させたくないから、いつも言い訳をさせない環境にする」

 勝てる組織作り。加藤氏の中で、それは言い訳を許さない組織作りでもある。

【下編に続く】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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