オリックス大補強の舞台裏 改革を託された男の哲学(下)

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オリックスが掲げるリーグ3連覇

 このオフ、大型補強を敢行したオリックス。その強化を手掛けた球団本部副本部長兼編成部長の加藤康幸氏(48)には2つの野望がある。

 1つはリーグ3連覇だ。

「セ・リーグでは巨人が3連覇しましたけど、パ・リーグは最近ないんですよ。西武がしたのはかなり前ですよね。だから3回優勝したら本物だと。ホークスもあれくらい勝って今やっと黄金チームのようになっているけど、3連覇はできていませんから」

 加藤氏の言うように、パ・リーグでは黄金時代の西武が1990年から1994年まで5連覇をして以来、20年もの間、成し遂げられていない。その偉業をこの1月のスカウト会議で目標に掲げたのだ。

 そのためにやるべきことはたくさんある。今オフは中島裕之内野手、小谷野栄一内野手、トニ・ブランコ内野手、ブライアン・バリントン投手らを補強し、エース金子千尋も残留。昨年のドラフトも狙い通りの指名を展開できた。しかし3連覇をするためには各選手の怪我のサイクルや好不調のバイオリズムなどあらゆる要素をシミュレーションし、チームパフォーマンスを毎年、高いレベルに維持し続けなければならない。

「それにはチーム構成として一枚刃、二枚刃、三枚刃くらい作っておく必要がある。それと1回優勝したらみんなが絶対2度と負けたくないという気持ちになるので、そのプラスのスパイラル、上昇気流をいかに作るかなんですよね。そうすれば3連覇はある」

 加藤氏はそう分析する。

 また長期間、常勝チームであり続けるには、一軍の編成だけでなく、ファームやスカウト陣を含めた組織全体の整備が不可欠だ。加藤氏は就任1年目の昨季、選手補強と並行してスカウト陣の整備に着手している。

「左ピッチャー出身のスカウトがいなかったので、大阪桐蔭のOBで近鉄、オリックスにいた人間をスカウトとして連れてきました。そしてキャッチャー出身もオリックスOBで採用しました。それでようやく全ポジションが揃いました。投手で先発、中継ぎ、左ピッチャー、キャッチャー、内野手、外野手出身のスカウトが全部。エリアが偏ってますけど、それを分散させて、スカウト陣は一通り終わりかなと思っています」

 今年からはファームなどの育成部門、スコアラーなどの戦術的な部門、トレーナーなどコンディショニングの部門などにも力を注いでいく方針だ。

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