24年ぶりVも十分に可能 王者巨人との戦力比較で見えてくる広島の実力

先発投手では巨人が優勢も、上積みは期待しにくい

20150210_hiro3r
互いに背負う異なるリスク

 ディフェンス面で戦力のベースとなるのは先発投手だ。表は昨年先発した実績があり、先発ローテーションの候補となっている投手のリストとなる。数値は昨年のものである。

 tRA(注3)は、奪三振・与四球など投手の基礎能力に加え、打たせた打球の種類や頻度から算出した数字で、バックの守備力が平均的だった場合に推定される失点率となる。三振を奪ってアウトを稼ぐ投手も、ゴロを打たせてアウトを稼ぐ投手も同じ土俵で比較できる。昨年のセ・リーグの平均は4.31。低いほどよい。

 巨人は杉内俊哉、菅野智之、内海哲也の3投手がよい数値を記録しており、小山雄輝も今年に期待が持てる結果だ。広島は前田健太が突出しているが、それ以外の投手は平均に届かないレベル。

 ベテランの域にある杉内、内海が昨年以上にイニングを伸ばすことは予想しにくく、失点を減らす働きで上積みを期待するのは厳しそうだ。巨人の先発投手陣が昨年以下の失点率を実現するには、他の投手が相当活躍する必要がある。

 広島は前田より若い投手がどんな成績を残すかで結果は大きく変わる。今年以上の好結果を残す投手が複数出てくれば巨人の投手力に迫る可能性がある。成績を落とせば小さくはない弱点に転じかねない。黒田博樹と新外国人のクリス・ジョンソンらは、そのリスクを下げる重要な役割を担う。両者が年間を通じてローテーションに加われれば、昨年程度の差に留められる可能性は高そうだ。

 センターラインでは広島が、先発投手陣では巨人がリードしている。今年の各選手の成績変動を考えても、ベースとなる戦力で広島が巨人に大きな差をつけられる可能性は低い。力勝負で巨人を破るチャンスが訪れているといってよさそうだ。

 優勝から遠ざかっている広島としては、この状況を確実に生かしたい。7度目のリーグ優勝を明確に見据え、コンディショニングや追加の補強などに全てを注ぐべきシーズンになるだろう。

(注1)wRAA:Weighted Runs Above Average
出塁、長打双方から得点創出力を計るwOBA(Weighted On-Base Average)のリーグ平均と該当選手の数値の差を使って算出する、同じだけ打席に立った平均的な打者を基準に、どれだけ得点創出に貢献したかを示す。

(注2)UZR:Ultimate Zone Rating
打球が飛んだ場所と、それに対する野手の処理状況を考慮して守備範囲を推定し守備能力をとらえる指標。数字は同じ打球に相対した平均的な野手に比べ、どれだけ失点を抑止したかをプラス、マイナスで算出する。

(注3)tRA:True Run Average
守備の関与しない与四死球・奪三振・被本塁打という3つの項目FIP( Fielding Independent Pitching)に加え、どのような打球を打たれたかも投手の責任範囲と定義して、守備の影響から独立した失点率を推定・評価する指標。投手を守備力のレベルから独立して評価するという点についてはFIPと同じだが、打たれた打球の種類にまで踏み込むことで、より実態に近い投手の失点阻止能力を捉えられる。球場ごとの打撃成績の傾向の影響を考慮し補正を行っている。

tRAの計算式(2014年スケール)
{(0.286×四球+0.308×死球-0.106×奪三振+1.366×被本塁打+0.043×ゴロ-0.119×内野フライ+0.146×外野フライ+0.308×ライナー)÷(奪三振+0.743×ゴロ+0.290×ライナー+0.993×内野フライ+0.669×外野フライ)×27}+定数×球場の影響

定数=リーグ平均失点率-{(0.286×四球+0.308×死球-0.106×奪三振+1.366×被本塁打+0.043×ゴロ-0.119×内野フライ+0.146×外野フライ+0.290×ライナー) ÷( 奪三振+0.743×ゴロ+0.290×ライナー+0.993×内野フライ+0.669×外野フライ)×27}

【了】

DELTA・秋山健一郎●文  text by DELTA AKIYAMA,K.

DELTAプロフィール

DELTA  http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。今年も『セイバーメトリクス・リポート4』を3月に発売。

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY