ダル負傷で先発6人制の議論再燃 立ちはだかる「球団レベル」の壁

黒田もメジャー時代に指摘、「球団レベル」の問題

 経営的観点からもクリアすべき問題はある。昨季までニューヨーク・ヤンキースでプレーした広島カープの黒田博樹投手は先発6人制について、こう語っていた。

「選手のパフォーマンスのことだけ考えたら良いと思うが、球団経営とかそういう部分では分からない。現場の考えより、ゼネラルマネジャーを含めた球団レベルの話になる」

 エース級の投手に対して年俸20億近く費やしているオーナーが、登板数を年間5~8試合も減らすことに同意できるのか。また、日本のように登録選手数を増やせば人件費の高騰につながる。計算のできる先発投手を一人増やせばそれだけ年俸総額は増え、経営陣にとっては負担となるからだ。

 チーム編成だけを見た場合、現時点で実現の可能性が高いチームがあるとすれば、ナショナルズだろう。オフにマックス・シャーザー投手を獲得。先発陣はシャーザー、スティーブン・ストラスバーグ、ジョーダン・ジマーマン、ダグ・フィスター、ジオ・ゴンザレス、タナー・ロアークの6人。昨季15勝を挙げたロアークがブルペンに回る見通しで質量ともに豊富、というよりタレントが溢れてしまっている。

 しかしながらここにも問題点が。ナショナルズが6人制を導入するとなれば、今オフにFAとなる資格を持つジマーマンにとって登板数が減るのは有り難くない話、ということになる。負担軽減よりも「個人成績」を重視する投手にとって魅力的な球団にはならない。

 また、今まではどのチームも5人で回していたため、エース同士が投げ合う確率が高かった。だが、1球団のみ6人制を導入した場合マッチアップも変わってくる。問題は一つや二つではなさそうだ。長く続いていたシステムを変えるのは簡単にはいかないものだが、契約や役割分業が明確なメジャーではなおさら難しい。シーズン中に期間限定で6人制を導入するチームはあるかもしれないが、シーズンを通した完全移行にはまだまだ時間がかかりそうだ。

【了】

伊武弘多●文 text by Kota Ibu

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