【小島啓民の目】努力していると言えなくなった瞬間 王貞治氏の生き様物語る“小さなコブ”

着実に進歩してきた野球の指導法

 私は社会人野球をはじめとしたアマチュア野球界の運営に携わる一方、リトルシニア九州連盟に所属する長崎文教シニアチームの会長という立場にて、チーム運営を行ない9年目ほどが経過しております。そのおかげで、九州各地の中学生野球の方々とお話する機会を得たり、実際に試合を拝見し、今のジュニア層の野球に触れる機会を得ています。

 中学生への指導には、私が中学時代の大昔と今の中学生の気質を仲間の指導者と比較したりしながら楽しく関わっています。私が中学生の時は、練習中は、「水を飲むな」「プールで泳いでは肩が冷えるから、水泳はだめだ」など言われていました。今では考えられないですね。

 長崎という田舎で育ったこともあり、新しい情報を得るまで、5年ほどの遅れがあったのではないでしょうか。今のような指導者に対する講習会なども、ほぼ開催されることなく、ライセンス制度が必要だとか、医科学分野の介入などについては議論されることなど皆無であったように感じます。

 ロサンゼルスオリンピックで野球が公開競技として初めて行なわれ、さらにバルセロナオリンピックより正式競技として認められ、アマチュア球界で強化という視点が芽生えました。私が所属している全日本野球協会は、まさにその強化を担うために出来た部署です。

 その発足に端を発し、野球指導に対して、大きく舵が切られました。医科学の導入や各層に対する指導者研修会などが各地で広がってきたのもこの頃からです。

 それから、忘れていけないのが、野茂選手の大リーグでの活躍です。野茂選手が当時取り入れていたメンタルトレーニングやストレングスへの取り組みは野球界に大きな影響を与えました。プロ野球チームを含めて、多くのチームで取り入れたものです。1992年に開催された、私が参加したバルセロナオリンピックチームにも野茂選手が実践しているというメンタルトレーニングのコピーが配布されたことを思い出します。

 今では大リーグの情報をはじめ、野球が上達するためのあらゆる情報がインターネット等を介して得ることができます。そういった意味では、地域性も全く感じられなくなってきました。甲子園で北海道、沖縄の高校が優勝するなど昔の人には、想像できなかったでしょう。

 今の指導方法が良いか悪いかは分かりませんが、確実に進歩していることは間違いありません。しかし、実際に身体で表現しなければならない技術については、情報を知りえただけでは向上するものではないことを理解する必要があります。

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