“後ろ”への依存はリスク大!? 救援投手陣に最も余力を残す球団はどこ?

日本ハム、DeNAの救援投手陣のやりくりに注目

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救援陣の登板状況 まとめ

 4つのデータから見えてくることを整理しよう。

 まず、救援投手の負荷は、勝ちパターンに持ち込める試合が多かった好調チーム(DeNAや日本ハム)と、先発投手陣が不完全もしくは得点力が低く、早めに救援につないで勝ちを拾ってきたチーム(ヤクルトやオリックス、楽天)両方で大きくなっている。

 その中で巨人とソフトバンクは一定の勝率を残しながら、救援投手陣に大きな負荷をかけずに済ませている。ブルペンの余力という意味では、この2チームがリードしている。

 好調ゆえに救援投手陣に負荷がかかったDeNAと日本ハムは、ここからは折り合いをつけていくための工夫が必要だ。今シーズンは4月の日程が緩く救援投手に負荷がかかりにくかった。だが、6月以降日程はタイトになっていく。同じペースの起用でも、これまで以上の負荷がかかる可能性が高い。

 日本ハムは2012年7月にダスティン・モルケン、昨年4月にアンソニー・カーターとシーズン途中に外国人救援投手を補強している。救援投手の消耗は織り込み済みで、補強によって折り合いをつける算段はついているかもしれない。

 ただ大谷翔平、上沢直之、浦野博司、有原航平など若い先発投手がそろってきているため、彼らでイニング消化が図れると判断すれば、現有戦力でやりくりする可能性もある。

 DeNAは救援投手の補強もしくは現有戦力からの掘り起こしに取り組むと思われるが、補強に出るならフロントの手腕が問われる。救援投手を使い減らさずに戦う、勝てる試合とあきらめる試合を見極めるベンチワークも必要だ。

 間接的には、打線の補強で得点力を上げ、先発投手を長くマウンドに立たせ救援投手の負荷を下げる策もある。ただし外国人枠、打撃優先のポジションが共に埋まっているため難しいかもしれない。

 ヤクルト、オリックス、楽天など得点力不足をカバーするために救援投手を使い減らしているチームは、ここからかなり厳しくなりそうだ。

 オリックスは昨年貢献を見せた救援投手陣に早めにバトンをつなぎ、不振を脱しようと試みたが、昨年のダメージからか調子が上がらず成功しなかった。そして今度は塚原頌平(27イニング・パ最多)、海田智行(24イニング)、白仁田寛和(23.2イニング)ら昨年はほぼ登板がなかった面々に負荷がかかっている。長期的にも短期的にも、救援投手陣のコンディションをうまく管理できず苦しい状況にある。

 救援投手に依存し結果を求めることのリスクはやはり大きい。フロント、ベンチが規律を設け、そのなかで実現可能な目標達成を図っていく必要があるだろう。

(注)FIP:Fielding Independent Pitching
守備の関与しない奪三振・与四球・被本塁打という3つの項目から、守備から切り離した防御率を推定する指標。本塁打以外の打球が安打になるかどうかは運の影響が大きいとするセイバーメトリクスにおいて主流の考え方に基づき、投手を評価するために用いられる。

FIP={13×被本塁打+3×(与四球-故意四球+与死球)-2×奪三振}÷投球回+定数

※定数=リーグの[防御率-{13×被本塁打+3×(与四球-故意四球+与死球)-2×奪三振}÷投球回]

【了】

DELTA●文 text by DELTA

DELTA プロフィール

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。http://www.deltacreative.jp

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