好調投手を支える球種を分析 楽天・松井のチェンジアップは魔球レベル?

数球種で有効性取り戻した涌井、松井はチェンジアップが魔球化

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ストレートの有効性高まった涌井 抑えに回った松井は3球種いずれも威力

 エースとして君臨していた西武時代のピッチングを取り戻しつつあるロッテ・涌井秀章投手はどうか。

 平均レベルを下回っていたいくつかの球種が安定してきたのがわかる。また力強くなったと指摘するファンも多いストレートは、特に有効になっている。球速は平均140キロと昨年から変化はないが、四球%の低下や打者にボールゾーンをスイングさせる割合が改善している。藤浪と同じく制球力で打者のボールの見極めを阻むことに成功しているのかもしれない。

 抑えに回った楽天の松井裕樹投手は、高かった三振%(注4)がさらに上昇。球種ではチェンジアップが抜群の威力を発揮している。打者から空振りを奪ったり、ミートもほとんど許していないことが予想される。チェンジアップを操る投手は多くいるが、松井のチェンジアップは現状、球界で最も打者が手を焼くボールの1つといってよい。

 投手の成績を全先発投手と全救援投手の平均値で比べると、多くは救援投手が上回り、短いイニングに集中できる救援登板は選手のパフォーマンスを高めることが日米で確認されている。松井の好成績も救援転向によるブーストがかかった結果といえるが、だとしても昨年は発揮しきれなかった潜在能力を開花させつつあるのも間違いないだろう。

(注1)Pitch Values
投手の投げたボールが、状況をどのように動かしたか(カウントを変える、打球が発生し、安打になったりアウトを増やしたりする、など)を球種ごとに集計。状況を動かした程度に合わせ重みづけを行った値を合算した後、全投球数で割ることで球種の平均的な価値・有効度を算出したもの。

(注2)ゴロ%
打たせた打球(ゴロ+フライ+ライナー)に占めるゴロの割合。打球はヒットになったかどうかでは区別せず、物理的にどのような打球だったかで区別する。

ゴロ%=ゴロ÷(ゴロ+フライ+ライナー)

(注3)四球%
全対戦打席に占める与四球の割合。

四球%=四球÷対戦打席

(注4)三振%
全対戦打席に占める奪三振の割合。

三振%=三振÷対戦打席

【了】

DELTA●文  text by DELTA

DELTA プロフィール

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。http://www.deltacreative.jp

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