強い覚悟で臨むプロ6年目 菊池雄星はいかにして進化を遂げつつあるのか

スライダーも進化、現役最強左腕の称号を手にできるか

 スライダーも進化を見せていた。曲がり幅の少ない高速スライダーだ。4回には4番中島の足に当たりそうなワンバウンドのスライダーを振らせて三振を取るなど3つすべてのアウトを奪った。7回には糸井から速球並みの141キロの変化で空を切らせた。

 今季序盤は130キロ台前半の変化の大きい軌道だった。だが復帰2戦目を終え、改良を決断した。「左打者に打たれていたので、ふくらみの小さな変化にしようと。握りはそのままで、腕の振りを真っすぐに近づけました」。新球とも言える別物の武器に仕上げた。

 自らの戒めを守った。金子が2回に中村に先制ソロを献上し、中盤まで膠着状態に入ってもゼロを並べた。6回にメヒアが決定的な3ランを放ったが、菊池の投球が呼び込んだと言っていい。

 チームにとって金子は天敵だった。11年8月23日の白星が最後だった。過去5年間は1勝10敗と負けに負けた。7回無失点の菊池が6回4失点の金子に投げ勝ち、1398日ぶりに勝利をもたらした。「金子さんみたいな投手と投げられるのはうれしいこと。緊張感もあった中で、投げられたのは自信になる」。

 6月23日現在、4勝2敗。自らに勝敗がつかなかった2試合もチームは勝利している。登板試合での“貯金4”は先発陣の中で最多だ。交流戦で敢闘賞にあたる「日本生命賞」を獲得。賞金100万円の使い道に「貯金します」と笑って話したが、グラウンド上でも貯金のできる剛腕に変身し始めた。現役最強左腕になる可能性を秘めた巨星が雄々しく光り始めている。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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