【小島啓民の目】試合環境はどの程度選手のプレーに影響? 勝つために真っ先にすべきこと

高校野球に見られる改善点、国際大会で勝敗分けた“あるポイント”

 高校野球を観ているとグラウンドに入ってまずキャッチボール、シートノック、その後、すぐに試合というように、グラウンドをチェックしている光景をあまり見たことがありません。

 グラウンドに入ったらすぐにグランド状況を把握することから始めては、とアドバイスをしておきます。プロ野球のコーチが、良くフェンスに当たった打球の跳ね返り具合やバントした際のファールラインのボールの切れ具合をチェックしていますが、この類と同じことです。実際、私が日本代表を率いた2013年中国天津で行なわれた東アジア競技大会でもグラウンドを熟知していたため、勝利を得たことがありました。

 使用された人工芝球場が仮設球場ということもあり、コンディションが良くなく、一塁側ライン沿いにバントした打球は、ファールゾーンに切れていくが、三塁側ライン際にバントした打球は、ファールゾーンに行ったとしてもインフィールドに戻ってくるという特徴を試合前にチェックしていました。

 この試合は、プロ選手で構成される台湾との準決勝の大事な試合であり、送りバントが明暗を分けると思っていたため、選手には、送りバントは「三塁ライン際を狙え」と指示をしていました。

 均衡した試合で中盤の先取点を取るには絶好の無死一、二塁の場面で、バントを指示し、通常であれば「ファールになる」と判断するボールの転がり始めでしたが、一旦ライン上に乗り、インフィールドに戻ってきました。このバントが決まり、ビックイニングとなり、台湾に大差で勝つことができました。

 野球はドーム球場が増えたといえ、自然とどう付き合うかが必要なスポーツです。天候やグランド状況に合わせたプレーの選択を行なえるようにも、日常から鍛錬する必要があります。プロ選手の何気ないプレーの中にも色々な情報を踏まえてプレーを選択をしているということを知って野球を観ると、より面白く試合観戦できると思います。

【了】

小島啓民●文 text by Hirotami Kojima

小島啓民 プロフィール

kojima
1964年3月3日生まれ。長崎県出身。長崎県立諫早高で三塁手として甲子園に出場。早大に進学し、社会人野球の名門・三菱重工長崎でプレー。1991年、都市対抗野球では4番打者として準優勝に貢献し、久慈賞受賞、社会人野球ベストナインに。1992年バルセロナ五輪に出場し、銅メダルを獲得。1995年~2000年まで三菱重工長崎で監督。1999年の都市対抗野球では準優勝。日本代表チームのコーチも歴任。2000年から1年間、JOC在外研修員としてサンディエゴパドレス1Aコーチとして、コーチングを学ぶ。2010年広州アジア大会では監督で銅メダル、2013年東アジア大会では金メダル。侍ジャパンの台湾遠征時もバルセロナ五輪でチームメートだった小久保監督をヘッドコーチとして支えた。2014年韓国で開催されたアジア大会でも2大会連続で銅メダル。プロ・アマ混成の第1回21Uワールドカップでも侍ジャパンのヘッドコーチで準優勝。公式ブログ「BASEBALL PLUS(http://baseballplus.blogspot.jp/)」も野球関係者の間では人気となっている。

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