一流IT企業を辞退して選んだ独立リーグの舞台 NPB研修審判員が描く未来

野球を「する側」から「支える側」へ、改めて気づかされた奥深さ

「アンパイアスクールで審判という今まで見ているだけだった人たちの考えを知り、プロ野球との近さを肌で感じ、試合を作り上げられることにやりがいを感じた。野球のプレーは数え切れないほど存在し、ワンプレーごとにもそれぞれタッチの仕方や送球の位置、選手の動作などで、立ち位置やチェックするポイントがさらに何倍にも増える。1試合1試合で新たな発見があり、そこに惹き込まれていった」

 判定するという目線で野球をとらえると、今まで気にしていなかった野球の見方が一気に変化した。ルールやプレー、複数の状況を同時に追い想像力を働かせることに、チャレンジしたいという探究心がくすぐられた。

「(審判は)全然知らない世界だなというのが一番。野球をする側から支える側になり、こんなに仕事が多いことを知ったし、わからないこともたくさんある」

 自らの立ち位置を冷静に分析しながら、審判の道を選んだ半年前をそう振り返る。「ルールについての面」については知らないことだらけだった。

「走塁妨害の種類や、タイムプレイの定義。プレイヤーの時はまったく気にしていなかった状況ごとの判断するタイミングの違いや、プレイの種類ごとのルールの差異。知らないことばかりだった」

 例えば、ランダウンプレー(挟殺プレー)の際、走塁妨害が起こった場合はすぐにボールデッドとなる。一方、打球の位置とは関係のない(=プレーの起こっていない)場所での妨害はすぐにボールデッドとはならず、走塁の結果や妨害の影響度によって判断がされる。

 タイムプレイは、走者の第3アウトと、別の走者の得点のどちらが早かったかを判定しなくてはならない状況のことを言う。つまり、2死二塁からの外野へのヒットで打者走者が二塁進塁を狙いタッチアウトになった場合、打者走者のアウトになるタイミングと、二塁走者の生還するタイミングを見比べる必要が出てくる。2死三塁の内野ゴロの場合で、打者走者より三塁走者が早くホームベースを踏んでも得点にならないことは知られているが、審判はタイムプレイの場面では打球はもちろん、複数のランナーを同時に目で追うことが求められる。

 普段気にしていなかった何気ないワンプレーにも、ジャッジするにあたり改めて野球の仕組みの緻密さに気づくことは多いという。野球はスポーツの中でも特にルールの数が多く、奥が深い。その複雑さは普通なら敬遠してしまうところだが、22歳の若者は「まだまだ野球の知らない面がある」と目を輝かせる。

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