パ球団の若手起用で明暗? ホークス&日ハム躍進の裏に優れた野手育成戦略

若手重視も明暗分かれたホークスと楽天、「ただ若手に打席を割り当てるだけ」では不十分

 他球団の二軍に目を向けると、日本ハムの次に25歳以下の若手に多く打席を割り当てているのがソフトバンクと楽天で、共にオレンジ色のグラフの左端が盛り上がっている。ただし、二軍の年齢構成は似通っているものの、両チームに所属する野手の打撃成績は対照的な内容となっている。

 二軍の野手成績を見るとソフトバンクは規定打席到達者を4人出し、その中の3人がウエスタンリーグの打率5傑に入る活躍を見せている。三軍まで設置する厚い選手層の中から、次世代のレギュラーを担う野手が育ってきていると言えるだろう。一方で楽天の二軍は規定打席到達者を1人しか出すことができていない。若手を積極的に起用してはいるものの、上手く育成できているとは言い難い状況だ。

 一軍成績を見ても、総得点はソフトバンクがパ・リーグ1位、楽天が最下位。両チームの野手陣が攻撃面で果たした貢献は対照的だ。この違いが順位にそのまま結び付いていることを考えると、両チームの実力差の根底には野手育成面の格差があることは否めない。両チームとも一軍野手の多くが30代を迎え、サイクル的には野手陣全体が衰退トレンドに入りつつある点も共通しており、今後はさらに差が開いていく可能性も考えられる。

 両チームが現在置かれている状況の背景には、指導者の能力差もあるのかもしれないが、より根本的な問題として、そもそもチームに入団するプロスペクト(有望選手)の絶対数で差がついている可能性がある。両チームの直近10年間(2005-2014年)のドラフト指名選手を見ると、ソフトバンクは上位(1位・2位)及び自由枠で野手を8人獲得しているのに対し、楽天が同順位で獲得した野手は3人にとどまっている。1位及び自由枠に絞ると、楽天は1人も野手を指名してこなかった。

 ソフトバンクと楽天の事例は、若手野手の育成を目指すときに「ただ若手に打席を割り当てるだけ」では不十分で、「どの若手に打席を割り当てるか」も重要であることを示唆している。

 野手の世代交代の行き詰まりを受けてか、楽天は投手中心のドラフト方針を転換させ、2015年のドラフト会議では7人中6人で野手を指名。特にオコエ瑠偉は球団史上初のドラフト1位指名野手となった。ドラフトによる選手供給の転換により、楽天の野手編成には今後大きな変化が起こる可能性がある。

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