パ球団の若手起用で明暗? ホークス&日ハム躍進の裏に優れた野手育成戦略

一軍は隆盛も二軍の中堅化が進む西武、二軍が高齢化しているロッテとオリックス

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野手の年齢別分布と退団状況

 西武の一軍の年齢分布を見ると、日本ハムに次いで25歳以下の若手に多く打席を割り当てている。これは、若手でありながらレギュラーを確保した森友哉や浅村栄斗をチームに抱えているのが大きい。

 一軍全体を見ても20代後半を中心とした分布が確認できる。20代後半は野手の成長曲線の頂点に相当するため、西武は選手の多くが働き盛りの時期を迎えている「円熟期の真っ只中」にあると言えるだろう。実際に2015年現在、西武野手陣は強力打線を形成するに至っている。

 若々しい一軍とは対照的に、二軍は他球団と比較してピーク帯がやや右側に偏っており、「二軍野手の中堅化」が進行しているようだ。西武首脳陣は野手陣の充実ぶりを受けて、2012年以降は投手中心のドラフト選手獲得を行っており、二軍の若手野手が枯渇気味になっている可能性がある。そろそろ若手野手を重点的に確保する年をつくってもよいかもしれない。

 ベテラン野手を多く抱えるロッテとオリックスは、二軍において20代後半以降の選手の打席数が多くなっている。両チームの二軍は一軍主力野手の調整場所としての色合いが強いようだ。

 当然のことではあるが二軍戦の打席数は限られている。戦力調整を優先した結果、二軍の若手野手の成長が阻害されている可能性は否定できない。

 ただし、その中でも二軍での若手への打席の割り当ては両チームで大きく異なっている。ロッテは20代中盤の選手に多く打席を与えているのに対し、オリックスはこの年齢帯には深い谷があり、もっと若い20代前半の選手に多く打席を割り当てている。ここからは、二軍の位置付けを「調整する場所」から「育成する場所」へ変化させる意図が見て取れる。

 オフに入り

・谷佳知 (42歳/一軍32打席、二軍130打席)
・ヘルマン (37歳/一軍245打席、二軍23打席)
・平野恵一 (36歳/一軍123打席、二軍7打席)
・竹原直隆 (35歳/一軍88打席、二軍121打席)
・鉄平 (32歳/一軍22打席、二軍107打席)

といった選手が退団したことも二軍の位置付けの転換につながっていくかもしれない。今後のオリックスの浮沈は、この二軍の構造転換が上手くいくかどうかに懸かっているといえるだろう。

【セ・リーグ編に続く】

DELTA・竹下弘道●文 text by DELTA TAKESHITA,H

DELTA プロフィール

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。算出したスタッツなどを公開する『1.02 – DELTA Inc.』は現在ベータ版を公開中。

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