【小島啓民の目】技術同様に向上が必要なメンタルトレ 一流を目指すアマ選手に必要なこと

アマ時代から目的意識を高く持っていた杉内

 よく指導者から「こうしなさい」という指示を仰いでいるシーンがありますが、指示を仰ぐ前に「おそらく監督はこう言うだろうな」など先読みをするような選手は伸びています。試合においては、例えば「前の打者が出塁したら、次は、自分はどういう状況で、更にどういうバッティングをしなければならない」と整理しておけば、監督からのサインの意味が理解できて、上手く遂行する可能性が高くなります。

 目的意識を高く持つことはメンタル面の強さにつながっていきます。私が出会ってきた中ではやはり、三菱重工長崎で指導した現巨人の杉内俊哉投手。ホークス時代はベンチを殴って骨折するなど目を覆いたくなるようなところもありましたが、自分の進むべき方向を見据え、何が今必要なのかをちゃんと考えて練習していたように感じます。練習では目的を持って、走り込んでいました。

 彼はいつも投げる前に勝つことをイメージしてマウンドに上がっていました。プロに入ってもヒーローインタビューを受ける自分を想像して投げていると彼の著書にも明記されていました。先を見られる力があったから、彼には自信という強さがあった。今年は股関節のけがで苦しんでいますが、ここまでの成績を残せている所以でしょう。

 ルーティンの話をしましたが、ルーティンは上手くパフォーマンスを発揮するための一つの技術です。自分をコントロールし、平常時、練習時のパフォーマンスを発揮するというものです。これに対して、先を読む「予測」は予めの準備を頭の中で整理していくという自分自身としての戦略、戦術となってくるわけです。受動的に事象が起きてから対応していく力もスポーツの世界では必要ですが、相手よりも先に仕掛けていくという姿勢、つまり経験から基づく先読みする力は好結果を出すためには更に重要です。

 多くの失敗や成功から学び、その経験を元にした先を読む力を利用し、戦力、戦術を立案し、更にプレーに活かすというサイクルの繰り返しをプレーヤーは行わなければいけません。チーム運営も全く同じですね。「プレミア12」では悔しい敗戦をしましたが、海外大会の雰囲気や外国人選手の特性は把握できたはずです。

 この経験を元に日本野球を再度、見つめ、何が強みで、何が足りないのかをしっかり分析し、次のWBCに繋げてほしいと思います。

【了】

小島啓民●文 text by Hirotami Kojima

小島啓民 プロフィール

kojima
1964年3月3日生まれ。長崎県出身。長崎県立諫早高で三塁手として甲子園に出場。早大に進学し、社会人野球の名門・三菱重工長崎でプレー。1991年、都市対抗野球では4番打者として準優勝に貢献し、久慈賞受賞、社会人野球ベストナインに。1992年バルセロナ五輪に出場し、銅メダルを獲得。1995年~2000年まで三菱重工長崎で監督。1999年の都市対抗野球では準優勝。日本代表チームのコーチも歴任。2000年から1年間、JOC在外研修員としてサンディエゴパドレス1Aコーチとして、コーチングを学ぶ。2010年広州アジア大会では監督で銅メダル、2013年東アジア大会では金メダル。侍ジャパンの台湾遠征時もバルセロナ五輪でチームメートだった小久保監督をヘッドコーチとして支えた。2014年韓国で開催されたアジア大会でも2大会連続で銅メダル。プロ・アマ混成の第1回21Uワールドカップでも侍ジャパンのヘッドコーチで準優勝。公式ブログ「BASEBALL PLUS(http://baseballplus.blogspot.jp/)」も野球関係者の間では人気となっている。

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