最良の選択に? 青木宣親、マリナーズとの早期契約の裏側

プレーオフ進出狙えるマ軍、青木の希望通り岩隈も残留決定

 さらに言えば、投手陣に大金を注ぎ込み、野手に対して財布の紐が固くなっている今オフの傾向を考えれば、現段階では同額の契約を引き出すのですら難しかっただろう。

 1月ともなれば年俸調停権を持つ選手や保有権を持つ選手の年俸が具体的に見えてくるため、各球団ともに今季予算の残高はかなりタイトになってくる。キャンプイン前に早く所属先を見つけて自主トレに専念したい選手サイドが、買い叩かれる形になることも少なくない。

 そういった状況を考えてみると、契約交渉を無駄に延ばすことなく、早期段階で出揃ったオファーを見比べながら、自分のパフォーマンスで証明しながら出来高を積み上げればいいと潔く決めた青木と代理人のプランは正しかったと言えるだろう。

 青木が望んでいた通り、同学年の岩隈久志もマリナーズ残留が決定。一塁手にはアダム・リンド、捕手にはクリス・アイアネッタ、救援陣にはスティーブ・シーシェック、ホアキン・ベノワらを迎え、チームは2001年以来のプレーオフ進出を十分に狙えるだけの戦力を整えた。今から10カ月先の未来、すべての戦いを終えた青木が「あの決断は正しかった」と微笑んでいる可能性は十分にある、と思う。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

佐藤直子 プロフィール

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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