過去には岩村、西岡も負傷…MLBの二塁交錯プレー、新ルール導入は是が非か

スライディングは選手の気合の見せどころ?

 メジャーでは、併殺プレーで二塁カバーに入った野手は二塁ベースに足で触れた後、すぐに走者進路から外れることが当たり前とされている。一塁に送球しながらでも送球する前でも、ひとまず一二塁間を結ぶ線上+走者が両腕を広げた範囲から外れることで、不用意な交錯プレーを避けようとする。日本人選手の場合、多くがベースカバーに入った塁上でジャンプして走者を避けようとするが、これでは野手に否があると判断される。

 パイレーツ姜が骨折した時も、スライディングをしたコグランは一般的に合法と考えられる範囲(一二塁間を結ぶ線上+走者が両腕を広げた範囲)から外れ、スライディングする足が高く上がっていたが、そこまで大きな問題としては取り上げられなかった。だが、アトリーによるプレーは選手からも「汚いプレー」という声が上がるほど極端なもので、ルール改正に携わるメジャーリーグ機構のジョー・トーリ氏も遺憾の意を示した。

 二塁で併殺プレーを崩すスライディングを見せるのは、野球選手の魂や気合の見せどころだという選手も多い。意外かもしれないが、メジャーリーガーでも1980年以前生まれの選手は、日本人の精神論に近いことを唱える時がある。本塁上での交錯プレーを禁止するルールが導入された2年前にも、この“オールドスクール”の選手を中心に同様の声は聞かれ、怪我をするリスクを冒してでも塁を陥れたいという情熱が野球を面白くすると話す選手が多かった。

 米メディアの報道によれば、今季から適用できる形で二塁交錯プレーに関する新ルールが近々発表される予定だという。選手の安全を重視するために本塁での衝突プレーを禁止した2014年に加え、今度はどんなルールが制定されるのかは気になるところ。個人的には、選手が怪我をするのは見たくないが、アウトになるかセーフになるかギリギリのプレーに全力を尽くす選手の

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

佐藤直子 プロフィール

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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