敗れた小豆島 選手宣誓の主将が「震災」に触れなかった理由

相手校にも伝わった小豆島・樋本主将の選手宣誓

 釜石の佐々木監督は常々、「野球をやることと震災は関係のないこと」と切り離して考えてきた。同時に心に留めてはいても、「重すぎて(安易に)語れるものではないこと」と口に出すことはせず、野球を通じてのメッセージで選手たちの心を奮い立たせ、甲子園の切符をつかんだ。愛情の深い監督だ。

 宣誓の言葉を一緒に考えてきた小豆島の杉吉監督は佐々木監督のその思いを知り、本当に大切なこと、伝えるべきことは何なのかを考えた。

 樋本主将の宣誓は自分の学校がなくなることを引き合いに出し、目の前にある日常を大切にし、支えてくれる人への感謝を伝える言葉だった。受け取り方は人それぞれで、釜石の菊池主将は震災の時のことを思い出したという。今、野球ができることに感謝しながら、この日、甲子園のグラウンドを駆け回った。伝えたかった思いは、伝わったのかもしれない。それは小豆島、釜石の両校だけでなく、出場する32校にも共通しているのではないだろうか。

 それはこの日の熱戦にもつながったはず。選手たちが懸命にプレーする姿は、大声援を送ったアルプス、地元から応援した故郷の人々の心に刻まれたに違いない。大事なことは何か。それは精いっぱい、力を尽くしてプレーすることと、元気な姿で野球をすること。この日の1試合に、両校の思いが凝縮されていた。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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