問われる金本監督の手腕 遊撃・鳥谷の起用法が阪神の浮沈のカギに?

キーマンは大和? 中堅、左翼、二塁がやりくりのポイント

 マートンが去り空いた左翼、また中堅は、打力に定評のある横田、高山と守備力の高い大和、江越の併用でまかなっていくと見られる。この4人で、マートンを組み入れた場合よりも攻守で良い数字を残す起用を図っていく必要がある。これもなかなか難しそうだ。

 最も実績のある大和の高い守備力は魅力的だが、打率.225、出塁率.272、長打率.245だった昨シーズンレベルの打力では、得点力の維持に支障をきたす。もう少し良い数字を残していた2013、14年レベルの成績に回復すれば、軸になれるかもしれない。

 上本博紀らが務めた二塁には西岡剛が復帰する。オープン戦でも好調を維持しており、開幕戦でスターティングメンバーに名を連ねる可能性もありそうだ。しかし、西岡は7月に32歳を迎えることもあり、広い守備範囲を求められる二塁で守備の数字を大きく伸ばすのは難しいとみられる。

 昨シーズン苦しんだ右肘のケガも、回復状況によっては間接的に影響するだろう。併用されそうな上本の守備力も高くはなく、二塁での守備力の上積みは期待しにくそうだ。守備力で昨シーズン以下に陥る可能性もある、注視しないといけないポジションだ。

 鳥谷の遊撃での常時起用、西岡の二塁復帰などに目を向けると、金本監督は得点力アップを志向しているようにも映る。昨シーズンより守備力を高められそうなのは、若手野手が起用されそうな左翼ぐらいで、これだけで昨シーズン膨らんだ失点を減らすのは厳しい。

 そうなってくると、守備力のある選手が守るイニングを各ポジションでまんべんなくつくり、少しずつ守備でのマイナスを削り取り、失点を減らしていくというのが現実的な道となる。

 そこでキーマンとなるのが大和だ。どこかのポジションでレギュラーを張るには打力で不安があるが、遊撃、中堅、二塁という守備力を要するポジションを、平均以上のレベルで守るポテンシャルを備えている。大和を鳥谷や西岡らのバックアップとしてうまく起用できれば、両選手のコンディションを安定させ守備力低下を抑えながら、両選手の欠場時は大和本人の守備力でチームに貢献することも可能になる。このマネジメントに成功すれば、得点力を維持したまま守備力のアップにつなげることができるだろう。

※1 阪神の総得点は少ないが、これは得点の入りにくい球場を本拠地としていることや、巡り合わせの偏り(安打や四球などが出た割に得点があまり入らなかった)などが影響していると見られる。

【了】

DELTA●文 text by DELTA

DELTA プロフィール

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を2015年3月27日に発売。集計・算出したスタッツなどを公開する『1.02 – DELTA Inc.』も2016年にオープン。

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