選抜決勝で好ゲーム展開 智弁学園、高松商両監督に見る現在の選手指導法

長尾監督の場合は? 「厳しすぎると子供は絶対に縮こまる」

 準決勝の龍谷大平安戦で甲子園で初めてスタメンに起用した左翼の中村がエラーし、失点につながった。監督は中村がプレーに集中していないことを見抜くと「打席で取り返すつもりでいけ」とゲキ。この試合、9回に4連打でサヨナラ勝ちしたのだが、気持ちを切り替えられた中村はその中の一本を打ち、勝利に大きく貢献した。

 高松商の長尾監督も同様だ。「『失敗』と書いて『成長』と読む」をモットーにし、選手を見届けてきた。「自分の指導が正しいとは思わないですが、部員の気持ちがゆるんできた時は締めています。ただ、時代もあって、厳しすぎると子供は絶対に縮こまります」と分析する。

 指導者人生をスタートさせた頃は「厳しかったと思います」。根性論を打ち出して、選手たちに走り込みもさせた。しかし、ある一定のところから選手がなかなか伸びてこなかった。

 中学野球の監督なども経て高松商の監督に就任してからは、選手起用の難しさを痛感。県内の有力選手が集まったため、力のある選手を補欠にしなくてはならなかった。そのためには会話が大切だった。ノートを交換し、じっくり膝をつき合わせて話もした。監督としての考えを一人一人に丁寧に伝え、チームをまとめていった。

 高校生という多感な時期を預かる指導者の責任は重大だ。決勝を戦った2人の指揮官は監督であると同時に、生徒を社会に出ても通用する人間に育てていくことも重視している。厳しさを持ちながら、選手の気持ちを重んじる。そのような理想を思い描いたとしてもやり抜くのは難しい。両監督の指導は現代の子供たちを伸ばし、強いチームを作り上げていく一つのモデルケースになるかもしれない。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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