“スイングしない打者”山田哲人がスゴイ 際立つ「引っ張り」と「見極め」

「引っ張って、角度をつける」―、山田哲人の打撃の変化

 山田のバットでの大活躍は、試合を見ていれば誰にもわかることだが、その活躍を掘り下げた数字でも、良い意味での変化が見られる。

 細身の山田が長打を量産できる理由の一つとして、打球に適度な角度をつけて「上げる」技術に優れている点があげられる。ゴロはフライに比べ長打になる可能性が低く、フライを打つ、つまり打球を上げる技術は長距離打者にとって欠かせない要素である。とにかく一定の距離の出るフライを数多く打てなければ長打は増えようがない。外野に到達するようなフライをどれだけ打てているかは、その打者の潜在的な長打力を表しているといってもいい。

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「引っ張り」「フライ」が増加する山田哲人の打球

 山田の全打球に占めるフライの割合(FB%:Fly ball percentage)は、2014年から49.0%→54.8%→58.1%と推移しており、着実に打球を上げられる打者へと進化している。また、山田が打った打球の方向を調べても変化が見られる。グラウンドを角度によって3分割し、右打者の山田が引っ張った打球(三塁線から約30°の角度の領域に飛んだ打球)を「Pull」、逆方向へ打った打球(一塁線から約30°の角度の領域に飛んだ打球)を「Oppo」、その間のセンター方向に飛んだ打球を「Cent」に分類し、それぞれの割合を集計し、年度推移を見たのがこの図だ。

 山田はもともと引っ張り傾向が強い、つまりPullの割合が高い打者なのだが、この2年フライが増えていったのと同じように、37.9%→45.2%→52.7%とPullの割合を上げている。2014年はCentがPullをわずかに上回っていたが、2015年と今年は逆転。数字からはOppoの減少分が、そのままPullに移動しているようにも見える。

 山田はまさに今、以前ならライトに飛んでいた打球をセンターに、センターに飛んでいた打球をレフトに、「引っ張りこむ」技術を洗練させている最中であるようだ。

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