「横の揺さぶり」で飛躍、巨人・菅野の投球を検証 9失点KOから修正なるか?

交流戦明け初戦で9失点――その原因とは?

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菅野智之(巨人)の「9失点」時のコントロール

 ところがである。交流戦明け初戦となる6月24日のDeNA戦で、菅野は2回1/3を投げ被安打11、9失点と大乱調に見舞われた。この日の投球データを見ていったとき、何よりも変調をきたしていたのは、菅野の好投を支えてきた制球力だった。

 図は捕手がミットを構えた位置を中心に設定し、投じたボールがそこからどれだけずれたかの集計だ。同心円の一番内側の円(A)は「ほぼミットの幅の中に来た」ボールを意味する。真ん中の円(B)は「ミット1つ分のずれに収まった」ボール。捕手が低めいっぱいに構えたとき「ストライクゾーンの真ん中、もしくは高めに来るような」ずれを見せたボールを(C)、「ストライクゾーン高めか、それ以上高めに抜けていく」ずれを見せたボールが(D)といった感じだ。

 9失点を喫した6月24日のDeNA戦と、圧倒的な投球で無四球完封勝利を収めた4月6日の阪神戦を比較すると、DeNA戦は構えたミットに近い(A)(B)の球がかなり少ないのがわかる。阪神戦ではこの2つの領域に約65%のボールが来ていたが、この日は20%強。また構えたミットからのずれ方も高め側へのものがほとんどで、これが被安打がかさんだ理由だとみられる。菅野が著しい制球難を起こしていたのが明らかだ。

 この日、バッテリーを組んだのが普段とは異なる相川亮二だったことの影響もあるかもしれない。それでも、ここまで制御の効かない投球はシーズン当初の菅野とは別人のものといっていいだろう。

 ストレートやスライダー、ツーシームなど球種の効力を高め、自己最高といっていいシーズンを送りつつあった菅野だが、24日のDeNA戦での投球の根幹を支える制球の乱れは、今後への小さくない不安要素となった。菅野の投球は今シーズンの巨人の浮沈を左右する。次回の登板で修正がなされるのかどうか。 非常に気になるところだ。

※1 握りとしては“ワンシーム”であると伝えられているが、今回は軌道のタイプで分類し、ツーシームとしている。
※2 昨季(2015年)については、カットボールはスライダーに含めている。

【了】

DELTA●文 text by DELTA

DELTA プロフィール

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~4』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート5』(http://www.amazon.co.jp/dp/4880653845/)を2016年5月25日に発売。集計・算出したスタッツなどを公開する『1.02 – DELTA Inc.』(http://1point02.jp/)もシーズン開幕より稼働中。

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