強化試合に挑む侍ジャパン 小久保監督の言葉から読み解くポイントは?(野手編)

2016.11.9

野球日本代表「侍ジャパン」は11月10日から13日まで東京ドームで4試合の強化試合を行う。小久保裕紀監督は、今回の強化試合に向けて野手は“常連”を中心に招集。熟成されてきたメンバーに“スパイス”を加えた形となったが、試合でのチェックポイントはどこになるのだろうか。

写真提供=Getty Images

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10日からメキシコ、オランダと計4試合、野手は初招集の2人に注目

 野球日本代表「侍ジャパン」は11月10日から13日まで東京ドームで4試合の強化試合を行う。相手はメキシコ代表(10、11日)とオランダ代表(12、13日)。メキシコ代表は、ジャイアンツのセットアッパーのセルヒオ・ロモ投手、ワシントン・ナショナルズのラファエル・マルティン投手、オリバー・ペレス投手とメジャーリーガーの3投手がメンバー入り。侍ジャパンの野手陣にとっては、絶好の腕試しとなる。

 小久保裕紀監督は、今回の強化試合に向けて野手は“常連”を中心に招集。初代表は大野奨太捕手(北海道日本ハム)、鈴木誠也外野手(広島東洋)の2人だけとなった。また、今季、二刀流で圧巻の活躍を見せた大谷翔平については、「DHまたは代打というところの外野手登録で使います」と明言している。熟成されてきたメンバーに“スパイス”を加えた形となったが、試合でのチェックポイントはどこになるのだろうか。

 まず大きな注目が集まるのは、初招集組の2人だろう。小久保監督は10月18日の日本代表メンバー発表会見で、侍ジャパンの捕手のレギュラーは決まっていないと明言。今回は嶋基宏(東北楽天)に加え、小林誠司(読売)を2年ぶりに招集したが、北海道日本ハムを10年ぶりの日本一に導いた大野にかかる期待は大きい。

「バッテリーを中心とした投手力というのが日本の一番の強みだと思います。今回、キャッチャーの大野奨太が初選出なのですが、キャッチャーとしてのレギュラーは今の侍ジャパンでは決まっていない状態なので、キャッチャーの強化もポイントだと思います」

 小久保監督はこのように話している。昨年11月の「世界野球WBSCプレミア12」で招集されていた炭谷銀仁朗(埼玉西武)、中村悠平(東京ヤクルト)は、今回は選外となっただけに、大野としてもしっかりアピールしておきたいところだろう。

山田と菊池は併用も? 「2人とも素晴らしい選手なので」

 また、25年ぶりのリーグ制覇を果たした広島東洋で、躍進の原動力となった鈴木も指揮官が期待を寄せる一人。プロ4年目の22歳は今季、リーグ2位の打率.335、同5位の29本塁打、同5位タイの95打点と圧巻の成績を残した。

 侍ジャパンの主力外野手は、筒香嘉智(横浜DeNA)、柳田悠岐(福岡ソフトバンク、今回は負傷で辞退)、秋山翔吾(埼玉西武)ら左打ちが多いだけに、小久保監督は「(初招集は)キャッチャーで大野はいますけど、野手は(実質)鈴木誠也しか入っていない。あとは過去に招集したメンバーがほとんどなので、右の外野手が不足しているという中で、彼には右の外野手として非常に期待してますね」と明かす。思い切りの良いバッティングで日本代表に定着できるか、注目が集まる。

 一方で、内野手の初招集選手はゼロ。その中で、小久保監督はポイントを挙げている。まず、ハイレベルな“レギュラー争い“の行方については、新たな答えが出そうな気配だ。山田哲人(東京ヤクルト)と菊池涼介(広島東洋)。打力と守備力で突き抜けた力を持つ2人は、同じセカンドを本職とするが、併用となる可能性が出てきた。

「セカンドは正直、2人とも素晴らしい選手なので……。ただ、ポジションは1つしかない。世界一を獲りに行くにあたって、違うポジションを守ってもらうことも出てくると思います。具体的にはそこを(本人たちに)話したりはしていませんが、試合を通してそういう起用法になる。試したいという思いはあります」

 小久保監督の言葉を読み解くと、山田と菊池のどちらかが他のポジションに回る可能性は十分にありそうだ。さらに「スーパースターたち、一流選手たちが集まる場所で、自分のチームでは本職のポジションについている選手ばかりなのですが、限られた枠の中で戦わないといけない。自分の本業のポジション以外も守ってもらう可能性もあります」とも話しており、ある程度の幅をもたせた起用法で、適正を確認することになりそうだ。

野手として招集した大谷の起用法は? 4番争いも「現時点では決めてない」

 そんな中、内野ですでにレギュラーとして“当確ランプ”を灯しているのが、坂本勇人(読売)。今季は打率.344で首位打者に輝き、出塁率.433もリーグトップだった。レギュラーシーズン中は不動の3番だったが、クライマックスシリーズでは1番で出場しており、侍ジャパンでの起用法は大きなポイントとなる。小久保監督も、今季の“躍進”を高く評価している。

「打順は4試合の中で、ある程度、どれが最も機能するかは試したいという思いがあるので、今の時点では何番ということは決めてはないです。ポイントになるのは1番、3番だと思うんですね。そこに誰を置くか。自分だけでなく、コーチ陣と決めていきたいと思います。彼の持っているポテンシャルを考えた時には、彼自身、正直(昨年までは)伸び悩みと感じていたと思うんです。この1年間の大きな飛躍で、代表チームとして非常に心強い存在になったなと認識しています」

 そして、最大の注目は何と言っても大谷の起用法。指揮官は、今季は打者として大きな進歩を見せた二刀流右腕について「投打ともに日本のトップクラスだという認識」と説明する。

「本人としっかり話をしながら、(投打)両方できる希少な選手なので、負担がかかりすぎないようにしっかり配慮して考えていきたい。打順も決めてません。DHは1つの枠しかない。このメンバーを見ても分かるように、DHに入れる選手がたくさんいる。そのあたりはこれから考えていきます」

 1人で2選手分の役割を果たせる大谷が主軸に入れるとなれば、今後の侍ジャパンに大きなプラス材料となる。

 筒香、中田翔(北海道日本ハム)らが候補となる4番争いについては、小久保監督は「現時点では決めてないです。この秋の強化試合を見ながらと思ってます」と話す。また、主将は置かない方針で、「キャッチャーの嶋も含め、内川聖一(福岡ソフトバンク)、元気印の松田宣浩(福岡ソフトバンク)あたりが今まで通りやってくれればいいと思っています」と“常連組“のリーダーシップに託す方針だという。見どころの多い4試合となることは間違いない。

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