ホークス逆転劇を生んだ村松コーチの観察眼、試合前の敵練習で“異変”察知

ソフトバンク・村松有人外野守備走塁コーチ【写真提供:福岡ソフトバンクホークス】
ソフトバンク・村松有人外野守備走塁コーチ【写真提供:福岡ソフトバンクホークス】

DeNA梶谷の動きに注目「シートノックに入っていなかった…」

 ソフトバンクが逆転勝ちで2連勝を飾った。29日、ヤフオクドームで行われたDeNAとの日本シリーズ第2戦。パ・リーグ王者は一度はDeNAに逆転を許しながらも、7回に再び試合をひっくり返して快勝。本拠地での2試合に連勝し、最高の形で、敵地・横浜へと乗り込むことになった。

 この第2戦。試合を決める4点目は、意外な形でもたらされた。7回。この回、先頭の代打・明石が左中間を破る二塁打を放つと、城所の犠打で三塁へ。柳田が中前適時打を放って、まず1点差に迫った。さらに、今宮の二ゴロで送球を受けた遊撃・倉本が落球する痛恨の失策。内川の四球で満塁となり、ここで中村晃が右前へとはじき返した。

 三塁走者の柳田が生還して同点に。さらに二塁走者の今宮も本塁へとヘッドスライディングで突入した。右翼・梶谷のワンバウンド送球をキャッチした捕手・戸柱も懸命にタッチにいき、クロスプレーは際どいタイミングとなった。球審の判定はアウトだったが、工藤公康監督がベンチを飛び出してリプレー検証を要求。約7分に及ぶリプレー検証の結果、判定は覆ってセーフに。試合をひっくり返す1点が生まれた。

「リードも、スタートも良かった。迷いなくいってくれました。願いが通じました」と語ったのは、三塁ベースコーチとして、今宮を本塁へと突っ込ませた村松有人外野守備走塁コーチ。思い切って腕を回した決断には、ある背景があったという。

「梶谷は(試合前の)シートノックに入っていなかった。入らないというのは、そういうこと(どこか悪いの)だと思う。イニング間のキャッチボールを見ていても、そうだろうと」

 右翼の梶谷はどこかに異変を抱え、コンディションが万全ではないのではないか。全力での送球は出来ないのではないか。そう読んだという。

「少しでも逸れれば、いい勝負になる」。右前へと飛んだ打球を見ると、右腕を回した。打球をキャッチした梶谷が、小さいモーションでホームへ送球したボールは、わずかに一塁側に逸れた。その分だけ、一瞬早く、今宮の手が本塁に触れた。

「相手のエラーがあって、流れが来ているので回したところもありますね」。決勝打につながるまでに、DeNA遊撃・倉本の失策があった。普通ならば、併殺だった場面だが、ミスでソフトバンクとしては押せ押せのムードになった。その勢いに乗じたところもあった。

 リプレー検証で判定が覆ったが、それは最終的な結果。もちろん、走った今宮の好走塁、そして頭から突っ込んだ好判断もある。ただ、それだけでなく、このドラマの結末には、村松コーチの観察眼ととっさの決断も関係していた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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